<注釈別紙>


注1: マンション標準管理規約(単棟型)第27条について

(管理費)
第27条 管理費は、次の各号に掲げる通常の管理に要する経費に充当する。
 一 管理員人件費
 二 公租公課
 三 共用設備の保守維持費及び運転費
 四 備品費、通信費その他の事務費
 五 共用部分等に係る火災保険料その他の損害保険料
 六 経常的な補修費
 七 清掃費、消毒費及びごみ処理費
 八 委託業務費
 九 専門的知識を有する者の活用に要する費用
 十 地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成に要する費用
 十一 管理組合の運営に要する費用
 十二 その他敷地及び共用部分等の通常の管理に要する費用


注2: 裁判所ウェブサイト(裁判例情報)より
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=62595&hanreiKbn=02


注3: 裁判所ウェブサイト(裁判例情報)より
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=35205&hanreiKbn=04


注4: 区分所有法3条について

(区分所有者の団体)
第三条 区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。


注5: 区分所有法30条について

(規約事項)
第三十条 建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。
2 一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき区分所有者の規約で定めることができる。
3 前二項に規定する規約は、専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設(建物の敷地又は附属施設に関する権利を含む。)につき、これらの形状、面積、位置関係、使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払つた対価その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない。
4 第一項及び第二項の場合には、区分所有者以外の者の権利を害することができない。
5 規約は、書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)により、これを作成しなければならない。


注6: 東京高裁平成19年9月20日判決の「第3 判断、2」部分より抜粋

 (1) 前記事実関係によれば、被控訴人管理組合は、区分所有法に基づく必置の団体であり、組合員はこれに加入が義務付けられる区分所有者であるのに対し、被控訴人自治会は、任意の地縁的団体であり、会長は本件マンションの居住者であること、被控訴人自治会の設立後、それまで被控訴人管理組合が自ら行っていた催事、防災防犯活動、近隣町内会との交渉、所属団体への補助など本件マンションのコミュニティ形成に関連する活動を被控訴人自治会が行うようになり、他方、被控訴人管理組合は、組合員から管理費を徴収し、自治活動費264万7200円を計上して全体管理費口から被控訴人自治会に支出するようになったこと、もっとも、被控訴人管理組合が上記コミュニティ形成に関連する活動を自ら行っていた期間においては、これに対する支出額は最も多い年度で約170万円、その余の年度は数十万円程度であり、また、各年度の額も変動していたことが認められ、これによれば、この自治活動費の一部がコミュニティ形成に関連する活動に使用されていることが認められる。また、自治会費とは、一般に、自治会を運営しその諸活動を遂行する上で必要な経費を賄うための費用であり、構成員である自治会員から徴収すべきものであるが、本件の自治活動費は、被控訴人管理組合が区分所有者である組合員から徴収した管理費の中から支出されており、被控訴人自治会の会員でもある本件マンションのA〜L棟の住戸部分を区分所有する居住者(自然人)だけでなく、自治会員ではないA〜L棟の住戸部分を区分所有する法人(社宅使用中)、A棟のテナント部分を区分所有する法人、商業施設を所有する法人、駐車場施設の一部を所有する法人も負担し、他方、本件マンションのA〜L棟の住戸部分を法人から賃借し居住している自治会員は負担していないことからすると、一般の自治会費と異なる性質を有していると見ることもできる。

 (2) しかしながら、前記事実関係によれば、被控訴人自治会の設立に際し、被控訴人管理組合の理事長らは、本件マンションの居住者に対し、「自治会運営経費としての自治会費は管理組合の自治活動費より支出しますので別途徴収いたしません」と通知し、昭和62年度定期総会でも同旨の質問及び応答があったこと、被控訴人管理組合の昭和63年度定期総会議事録には、自治活動費の備考欄に「自治会費、振替」との記載があること、他方、その当時の被控訴人管理組合の資料には、自治活動費は被控訴人自治会に対する業務委託費であることをうかがわせる記載が全くないことからすると、当時の被控訴人管理組合の役員も組合員も、被控訴人自治会に支出する自治活動費264万7200円は、被控訴人自治会を運営しその活動を遂行する上で必要な経費を賄うための費用である自治会費に当たるとの認識を有していたと認めるのが相当である。
 また、被控訴人管理組合の昭和62年度第6回理事会議事録にあるように、自治活動費264万7200円を計上し(積算根拠は、1戸当たり月額200円×本件マンション総戸数1103戸×12か月である。)、これを各組合員から徴収した管理費の中から支出しているが、1戸当たり月額200円というのは一般的な自治会費の相場であるから、自治会が活動を行う上で必要な経費を賄うための費用として定期的に定額を徴収する自治会費に極めて類似している。これに対し、被控訴人自治会にコミュニティ形成業務を委託する対価というのであれば、委託した業務の具体的な内容に応じた金額を支払い、業務の成果を査定し、また、年度毎に委任する業務に応じた対価の額の変動が想定されるが、被控訴人管理組合が上記金額を決するに当たり、被控訴人自治会に委託する業務の内容とそれに見合う金額を具体的に検討した形跡は見られない上、1戸当たり月額200円として計算しこれを全額委託先に支払い、業務の成果を査定することがないという手法が、業務委託費の算定方法として合理的なものであると認めることもできない。加えて、上記議事録には、(自治活動費の)「使途は自治会に一任する」とあるが、業務委託の対価というのであれば、使途を委託先に一任するという取扱いは疑問であり、むしろ上記自治活動費は、その支出科目名のとおり、被控訴人自治会の活動経費として支出されたと見るのが合理的である。以上の点は、被控訴人管理組合が平成12年度の自治活動費の減額を求めた際にも1戸当たり月額100円で計算した金額を提示していること、しかも、減額を求める理由として、「今般の経済情勢並びに管理組合の財政逼迫、棟別積立金改定」という被控訴人管理組合の内部事情のみを掲げ、委託している業務との関係での減額理由を一切述べていないことからもうかがわれるところである。
 他方、被控訴人自治会は、平成17年の改正前の被控訴人自治会規約第14条において、「会の経費は、Y1マンション管理組合の自治会費及びその他の収入をもってあてる。」と規定し、各年度における決算報告、予算案及び収支報告明細等において、被控訴人管理組合から受け取った自治活動費(自治会活動費)を自治会費と記載するなど、自治活動費の性質は業務委託費ではなく自治会費であるとの認識を一貫して示し続けていたものであり、その当時の被控訴人自治会の資料にも、自治活動費がコミュニティ形成業務の委託費であることをうかがわせる記載は全くない。したがって、被控訴人自治会の役員も構成員も、被控訴人管理組合から受け取っている自治活動費は、被控訴人自治会が活動を行う上で必要な経費を賄うための費用、すなわち自治会費であるとの認識を有していたと認めることができる。

 (3) 前記1の(4)の本件業務委託契約締結前の状況も、平成16年3月27日被控訴人管理組合の全体監事が提出した書面において、自治活動費は自治会費であることを前提とした問題提起がされており、これを受けて、被控訴人管理組合の内部で「合法的な自治会費徴収方法」として4つの選択肢を検討しているが、そこでも、@コミュニティ形成業務の一部を被控訴人自治会に委託するというのは選択肢の一つでしかなく、他はすべて、A被控訴人自治会への参加者の自治会費を管理費から支出すること、B参加者に対し管理費とは異なる自治会費の徴収業務を代行すること、C被控訴人自治会が独自に参加者から自治会費を徴収すること(被控訴人管理組合は関与しない)など、それまで支出していた自治活動費は自治会費であることを前提としているから、被控訴人管理組合の内部で自治活動費は業務委託費に当たるとのコンセンサスが形成されていたことは認めることができない。そして、以上の4つの選択肢を検討した結果、@の方式が相当であるとの理事会の提案を受け、被控訴人管理組合は、平成16年度定期総会において、上記@の業務委託方式により被控訴人自治会と業務委託契約を締結することが承認され、他方、被控訴人自治会も、被控訴人管理組合内部の検討を受け、平成16年度定期総会において、被控訴人自治会規約第14条を改正したものであるから、結局、「合法的な自治会費徴収方法」として、被控訴人自治会にコミュニティ形成業務を委託しその対価として業務委託費を支払うという構成が採用され、それに基づいて被控訴人両名の間で本件業務委託契約が締結されたと認めるのが相当である。なお、被控訴人管理組合も被控訴人自治会もともにその会計年度は毎年4月1日から翌年3月31日までの単年度主義であるところ、本件業務委託契約は契約期間を平成17年7月1日から平成22年6月30日までの5年間とし、毎年264万7200円を支払い、しかも、双方から特段の申出がない限り、同じ条件で契約が自動更新されるというもので、このように複数年にわたって定額を支払うということからみても、上記264万7200円は業務委託費というよりも定額の自治会費とみるのが相当である。

 (4) これに対し、被控訴人らは、本件のように一つのマンションの居住者のみで一つの自治会を設立した場合は、自治会の活動が管理組合になり代わってマンション居住者間のコミュニティ形成活動を行っている関係にあることが多く、被控訴人自治会も設立当初から従前被控訴人管理組合が行っていたコミュニティ形成活動等を行っていたのであるから、自治活動費は当該コミュニティ形成業務の委託の対価であり、被控訴人両名の間において黙示の業務委託関係が形成されたと主張する。しかしながら、上記のとおり、被控訴人両名の役員も構成員も、被控訴人管理組合から被控訴人自治会に支払われる自治活動費は自治会費であるという認識を有していたことは明らかであり、両者の内部で作成された資料にも自治活動費が業務委託費であることをうかがわせる記載は全くないことからすると、被控訴人管理組合が被控訴人自治会にコミュニティ形成業務を委託したという関係が暗黙裡に形成されたと認定するのは無理があるといわざるを得ない。
 また、被控訴人らは、被控訴人管理組合は、被控訴人自治会にコミュニティ形成活動を委託するに当たって費用を精査し、直前の昭和62年度の自治活動費の実績をベースに、周辺の他の管理組合の実情をも勘案し、住戸1戸当たり月額200円を目安として計算した金額である年額264万7200円を自治活動費として計上することとしたものであり、他方、被控訴人自治会は設立以後自治会員から自治会費を徴収したことがないと主張する。しかしながら、被控訴人管理組合において、被控訴人自治会に委託した業務の内容とそれに見合う金額を具体的に検討した形跡が見られないことは上記認定のとおりであり、総額を決定する目安としたという1戸当たり月額200円というのは一般的な自治会費の相場であって、これをあくまでもコミュニティ形成業務の委託費というのであれば、このような手法で計算した定額を委託先に毎年支払い続けることが合理的であることを裏付ける理由が必要であるが、本件においてそのような理由を認めることはできない。そして、被控訴人自治会はこれまで自治会費を一切徴収していないという点も、自治会の活動に必要な経費を賄う自治会費を自治会員から一切徴収しないという取扱い自体疑問がある上、そもそも被控訴人自治会の設立に際し、自治会費は徴収しない旨を述べているのは被控訴人管理組合の役員であり、被控訴人自治会は、被控訴人自治会規約第14条で「会の経費は、Y1マンション管理組合の自治会費及びその他の収入をもってあてる。」と規定しているとおり、自治会員ではなく被控訴人管理組合から自治会費の支払を受けることとしたものである。そうすると、自治会費に関する被控訴人両名の認識は、自治会員である居住者から個別直接的に自治会費を徴収するのではなく、被控訴人自治会に代わって、被控訴人管理組合が組合員から管理費を徴収し、その中から自治活動費との支出科目名で自治会費を支払うというものであったと認めるのが相当である。
 さらに、被控訴人らは、被控訴人自治会の会員ではない法人等非居住の区分所有者が持分に応じて等しく管理費を支払っていること、被控訴人自治会の会員である区分所有者でない居住者が管理費を支払っていないことからして、管理費から支出される自治活動費を自治会員が負担する自治会費と同視することは不可能であるし、被控訴人管理組合が自治会費の徴収を代行しているということもできないと主張する。非居住者であるため自治会員ではない法人等が自治活動費を負担し、区分所有者ではないが居住者であるため自治会員である者が自治活動費を負担していないという実情だけを見れば、被控訴人管理組合が支払う自治活動費は自治会費と負担する者が必ずしも一致しないが、これは被控訴人自治会の設立に際し、被控訴人管理組合がその徴収した管理費から自治会費を支出することとし、これを被控訴人自治会も受け入れたという徴収と支出の在り方を決めたことに由来するものであって、そのような徴収及び支出を行っていることをもって自治活動費は自治会費に当たらないということはできないし、むしろ、このような徴収及び支出の方法をみると、被控訴人管理組合が自治会費の徴収を代行しているとみるのが相当である。
 したがって、被控訴人らの上記主張は、いずれも採用することができない。

 (5) 以上の認定によれば、昭和63年4月以降、被控訴人管理組合が被控訴人自治会に対し、自治活動費との支出科目名で毎年支払ってきた264万7200円は、被控訴人自治会が活動を行う上で必要な経費を賄うための費用としての自治会費に当たると認められる。そして、被控訴人両名は、平成17年7月2日本件業務委託契約を締結し、同月29日被控訴人管理組合が被控訴人自治会に業務委託費として264万7200円を支払っており、この中に実際に委託した業務の対価が一部含まれていることは否定できないが、その部分と被控訴人自治会の活動経費とを峻別することはできない上、従前の自治会費と全く同額が支払われており、本件業務委託契約の締結前後で上記金員の性質に変化がないことは当事者間に争いがなく、被控訴人管理組合の内部における徴収方法及び被控訴人自治会の活動にも変化がないことは当事者双方も認めていることなどからすると、上記264万7200円は従前と同じ自治会費に当たると解すべきである。すなわち、被控訴人管理組合の被控訴人自治会に対する264万7200円の支払は、名目上は業務委託費の支払であるが、実質上は自治会費の徴収代行に当たるというべきである。したがって、争点(2)の本件業務委託契約が区分所有法に反するか否かを判断するまでもなく、上記264万7200円は業務委託費に当たるとの被控訴人らの主張は理由がない。
 よって、被控訴人管理組合は、被控訴人自治会が徴収すべき自治会費を、管理費として組合員から1戸当たり月額200円徴収し、これを自治活動費又は業務委託費との支出科目名で、全体管理費口から被控訴人自治会に支出したと認めるのが相当である。このような被控訴人管理組合の自治会費の徴収代行により、組合員は、被控訴人自治会に対し、被控訴人管理組合を介して、自治会費を支払ったと認めることができる。