台東区マンション管理士会の設立記念セミナー開催
2012/4/17
2012年4月14日(土)午後1時30分から、台東区生涯学習センターで台東区マンション管理士会の設立記念セミナー「3.11から1年〜忘れてはいけない地震への備え〜」が開催されました。主催は台東区マンション管理士会、後援は特定非営利活動法人(NPO)耐震総合安全機構(JASO)。参加者には、JASO編「自分たちで守る地震対策・マンション編」、台東区「洪水ハザードマップ」などの資料が配布されました。
講師は、台東区マンション管理士会の中村利道会長(構造設計一級建築士、マンション管理士)が務め、首都直下地震の切迫性や東京湾北部地震(マグニチュード7.3)が発生した場合の想定被害などを再確認し、「危機は去ったわけではない」と注意喚起。建物の耐震性、耐震診断の必要性のほか、生活面からみたマンションの耐震性と戸建てとの違いなどを解説しました。
「マンションは、都会に住むうえでは優れた住建築といえ、建物の倒壊防止を目的と考えれば、戸建て住宅に比べても特にに劣らない耐震性があります。戸建てには、まま違法建築があり、大きな被害をもたらしたり、隣接する崖の崩壊による被害も多くみられますが、マンションではこうした問題はみられません」と中村会長は分析。しかし、地震の際に「生活を守る」ことを目標として考えれば、「戸建て住宅に比べ、明らかに劣る面が多いことも確か」といいます。
講演では、マンションの耐震を考えるうえで必要なポイントが次のように説明されました(ただし、免振や制振の対策を施し、必要レベルまで建物が揺れないようにしたマンションは除く)。
(1)生活の耐震性
戸建てと比べた場合、区分所有建物で専有部と共用部がある、高密度の高層建物が多い、避難出口が限られている、など生活面からみた耐震性の特色がある
(2)共用部の耐震性
共用部は街のインフラにあたるが故障が多く、エレベーター、給排水設備、防災設備、避難扉・防火扉などは震災時の被害が大きい。
(3)機能の耐震性
新耐震以降の高層マンションでは、震度6強でも大破しないが、大地震直後は震度5弱以上で生活に支障のあるレベルとなり、震度5強では生活再開に相当な日数を要する。旧耐震のマンションでは上記震度階が1段階下がると思われる。高層になるほど機能の耐震性が低くなるのは、「建物の倒壊を防ぐ耐震」と「生活を守る耐震」が異なることによる。
(4)被害の回復
戸建て住宅は、都市インフラの復旧に続いて各戸のライフラインの復旧ができるが、マンションは復旧工事の手続きが面倒であり、工事業者も手が回らず、都市インフラが復旧してもライフラインの復旧に遅れが出る。
(5)管理体制
マンションでは、非常時に管理責任者がどこまでの対応ができるかが被害程度の基となり、管理体制が生活耐震性のネックとなりかねない。
このほか、東京都都市整備局が公表している「地域危険度」に基づき、台東区内の町丁目ごとに建物倒壊危険度、火災危険度、総合危険度のランクを確認。また、区内の緊急輸送道路の指定状況と参加者の居住地を地図で確認するなど、地域密着型のマンション管理士会ならではの講演が行われ、参加者から好評でした。
台東区マンション管理士会は、2011年9月に台東区と近隣区のマンション管理士有志が、台東区民のための地域密着型マンション管理士会をめざして設立したものです。マンション管理の諸問題について、マンションにお住まいの方や管理組合役員、マンション購入を考えている方などからの相談に応じ、さまざまな情報の提供・支援を行うとともに、マンションの適正な管理と良好な住環境の実現に貢献しています。
(企画提供/台東区マンション管理士会)