<連載第2回>
団地管理組合と区分所有法59条との関係
2012/9/18
今回は、団地管理組合(区分所有法65条参照)[注1]と区分所有法59条との関係について考えてみましょう。
ご承知のとおり、区分所有法66条[注2]は、区分所有法第7節「義務違反者に対する措置」(57条〜60条)[注3]を準用しておりません。
そのため、団地管理組合において、例えば区分所有法59条に基づく競売請求訴訟を提起しようとするときに疑問が生じてきます。
次のような相談事例をもとに検討してみましょう。
<相談事例> 私たちのマンションはいわゆる「団地」ですが、私たちのマンション管理規約は単棟型をベースに作成されています。そのため、棟管理組合や棟総会についての定めが一切ありません。複数の棟を一体として「X管理組合」と称しています。 現在、X管理組合は、A棟の区分所有者に対して、区分所有法59条に基づく競売請求(提訴)を検討中です。 このような場合、X管理組合としての総会決議(特別決議)を経ればよいのでしょうか、それともA棟区分所有者の総会(いわゆる棟総会)を開催した上でA棟総会の決議(特別決議)が経る必要があるのでしょうか? ちなみに、私たちの管理規約上はX管理組合としての総会決議で足りるような定めになっています。 また、このような場合の原告については、どのように考えるべきでしょうか? |
前提事項
(1)原則論
まず、区分所有法57条から60条までの規定は団地関係に準用されていません(同法66条)ので、これらの規定に基づく措置(区分所有法第7節の「義務違反者に対する措置」)は棟ごとで講じなければなりません。
(2)区分所有法59条の強行法規性について
今日においても、団地型マンションでありながら、単棟型マンションのような管理規約を定めている団地管理組合が少なくありません。
そして、そのような団地管理組合の規約には、区分所有法57条から60条に定める措置についても団地管理組合の総会で決議する旨記載されていることがあります。
しかしながら、区分所有法57条から60条は強行規定であるため、その規定に反するようなことを規約に定めても無意味です。
したがって、相談事例の場合でも、仮に区分所有法59条に基づく訴えを提起するのであれば、当該棟の区分所有者の団体[注4]の「集会の決議」を経る必要があります。
相談事例の背景・現実論
相談事例のように、管理規約の中に棟管理組合や棟総会に関する定めが全くない場合、現実論として棟総会の招集方法等についてもよく分からないという話になります。
この点、もし規約に棟総会に関する定めが全くないのであれば、区分所有法に基づいて手続を進めていくことになります。
ちなみに区分所有法では総会のことを「集会」と呼んでいますので、ここでも、総会のことを「集会」と呼んで説明することにします。
次に相談事例における棟集会の進め方と注意点を挙げておきます。
相談事例における「集会」の進め方と注意点
@ A棟集会の招集手続については、区分所有法34条5項[注5]の手続きに従っておいてください。つまり、A棟の「区分所有者の5分の1以上で議決権の5分の1以上を有するもの」がA棟の集会を招集してください。
A 上記@に関し、複数の区分所有者で「5分の1以上」とする場合には、その複数人の「連名」で招集すべきでしょう。つまり、A棟の区分所有者の連名で、A棟集会の招集通知(区分所有法35条)[注6]を発するべきでしょう。
B 被告となる区分所有者には上記Aの招集通知とは別に、弁明の機会を与えるための通知書を送っておいた方がよいでしょう。その場合も、A棟集会の招集者(連名)により送っておいた方がよいでしょう。
C 団地管理組合集会とは別に(独立して)A棟集会を開催してください。
D A棟集会における特別決議(区分所有法59条の決議)は必須です。
E A棟集会の招集通知及び議案書は、A棟の区分所有者全員に発してください。
F A棟集会における議決権には注意してください(区分所有法38条参照)[注7]。
G A棟集会においては、集会を招集した区分所有者の一人が議長となった方がよいでしょう(区分所有法41条参照)[注8]。
H 区分所有法59条2項が準用する区分所有法57条3項[注3]の定めに従い「管理者又は集会において指定された区分所有者」が訴訟を提起すべきなので、原告については、A棟集会の決議によってA棟の区分所有者を指定しておくべきでしょう。
I A棟集会の議事録は団地管理組合集会議事録とは別に作成してください(区分所有法42条参照)[注9]。
(弁護士/平松英樹)