<連載第22回>
団地の管理について(総論)
2013/7/23
今回は団地の管理について考えてみましょう。
区分所有法は、第1章(1条〜64条)で「建物の区分所有」に関する規定を置き、第2章(65条〜70条)で「団地」に関する規定を置いています。第2章のうち、69条と70条は建替えに関する規定です[注1]。
そこで、まずは団地の管理に関する基本条文である65条〜68条を確認しておきましょう。
区分所有法65条について
1 条文
(団地建物所有者の団体) 第65条 一団地内に数棟の建物があって、その団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)がそれらの建物の所有者(専有部分のある建物にあって、区分所有者)の共有に属する場合には、それらの所有者(以下「団地建物所有者」という。)は、全員で、その団地内の土地、附属施設及び専有部分のある建物の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。 |
2 団地例
区分所有法65条は、「団地建物所有者」による団体の成立要件について定めています。
例えば、3棟の区分所有建物(A棟、B棟、C棟)の各区分所有者と、3棟の戸建て建物(D、E、F)の各所有者の全員の共有に属する1棟の集会所(=附属施設)があるとすれば、その附属施設(集会所)を核として、所有者(=団地建物所有者)全員で「管理を行うための団体を構成」します。
以下、便宜上、この団体を「A〜F団地管理組合」としておきます[注2]。
「A〜F団地管理組合」は、上記集会所の管理を行うため、集会を開き、規約を定め、管理者を置くことができます。
3 管理対象物について(原則)
「A〜F団地管理組合」の管理対象物は、基本的には共有に属する集会所(=附属施設)です。この点は後述しますが、戸建ての建物はもちろん、戸建て所有者のみの共有に属する土地や附属施設を「A〜F団地管理組合」の管理対象物とすることはできません(後掲の区分所有法68条1項1号末尾の括弧書き部分参照)。
区分所有法66条について
[注3]区分所有法66条は、第1章の「建物の区分所有」に関する各規定(「第7条、第8条、第17条から第19条まで、第25条、第26条、第28条、第29条、第30条第1項及び第3項から第5項まで、第31条第1項並びに第33条から第56条の7までの規定」)を準用し、各準用規定についての読み替えを行っています[注3] 。
例えば、第7節の「義務違反者に対する措置」に関する規定(57条〜60条)などは準用されていないので、注意が必要です。
区分所有法67条について
[注4]区分所有法67条は、一団地内の附属施設たる建物や区分所有建物の専有部分たり得る部分を、団地の規約によって「団地共用部分」とすることができる旨を定めています。
例えば、前記団地例の集会所を同条の「団地共用部分」とすれば、「第11条第1項本文及び第3項並びに第13条から15条までの規定」が準用されることになります(区分所有法67条3項)。
区分所有法68条について
1 条文
(規約の設定の特例) 第68条 次の物につき第66条において準用する第30条第1項の規約を定めるには、第一号に掲げる土地又は附属施設にあっては当該土地の全部又は附属施設の全部につきそれぞれ共有者の4分の3以上でその持分の4分の3以上を有するものの同意、第二号に掲げる建物にあってはその全部につきそれぞれ第34条の規定による集会における区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による決議があることを要する。 一 一団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)が当該団地内の一部の建物の所有者(専有部分のある建物にあっては、区分所有者)の共有に属する場合における当該土地又は附属施設(専有部分のある建物以外の建物の所有者のみの共有に属するものを除く。) 二 当該団地内の専有部分のある建物 2 第31条第2項の規定は、前項第二号に掲げる建物の一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものについての同項の集会の決議に準用する。 |
2 規約の設定の特例について
前記団地例において、例えばA棟についてみると、A棟の区分所有者全員でA棟共用部分等を管理するための団体(区分所有法3条)[注5]を構成しています(便宜上「棟管理組合」といいます)。各棟の共用部分等の管理は、各棟管理組合により行われるのが原則です。
ただし、区分所有法68条は、規約設定の特例として、@一団地内の土地又は附属施設が当該団地内の一部の建物の所有者の共有に属する場合における当該土地又は附属施設、A当該団地内の専有部分のある建物(区分所有建物)について、団地管理の対象とすることを認めています。
例えば、各棟管理組合が本来管理すべき物について、区分所有法68条の規定に基づき「A〜F団地管理組合」の管理対象とすることが可能です。
ただし、戸建て建物や戸建て所有者のみの共有に属する土地ないし附属施設を「A〜F団地管理組合」の管理対象とすることはできません(区分所有法68条1項1号末尾の括弧書き部分)。
3 特例の手続について
前記団地例の棟管理組合の管理対象物を、規約によって「A〜F団地管理組合」の管理対象とするためには、区分所有法68条に定める手続(@)と同法66条が準用する31条の手続(A)が必要です。
具体的には、@A棟、B棟及びC棟のそれぞれで区分所有法68条1項に定める決議(同条項柱書の「第2号に掲げる建物にあってはその全部につきそれぞれ・・・決議」の要件)、及び、A区分所有法66条が準用する31条に定める決議(つまり団地建物所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会決議)の両方が必要です。
さいごに(標準管理規約について)
国土交通省が公表しているマンション標準管理規約(団地型)が対象としているのは、「一般分譲の住居専用のマンションが数棟所在する団地型マンションで、団地内の土地及び集会所等の附属施設がその数棟の区分所有者(団地建物所有者)全員の共有となっているもの」です。
具体的に言えば、マンション標準管理規約(団地型)は、
「ア)団地内にある数棟の建物の全部が区分所有建物であること
イ)ア)の建物の敷地(建物の所在する土地と規約により敷地と定められた土地の両方を含む。)がその団地内にある建物の団地建物所有者の共有に属していること(建物の敷地利用権が所有権以外の権利である場合は、その権利が準共有に属していること)
ウ)団地管理組合において、団地内にある区分所有建物全部の管理又は使用に関する規約が定められていること
の三つの要件を満たしている団地」
を対象としています。
他方、「土地の共有関係は各棟ごとに分かれ、集会所等の附属施設が全団地建物所有者の共有となっている形態」の場合には、「基本的に各棟は単棟型の標準管理規約を使用し、附属施設についてのみ全棟の区分所有者で規約を設定する」とコメントされています(マンション標準管理規約(団地型)コメント参照)ので注意しましょう。
(弁護士/平松英樹)