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弁護士平松英樹のマンション管理論

<連載第25回>

管理組合法人について(総論)

2013/9/3

今回は「管理組合法人」について考えてみましょう。

区分所有法は、第1章第6節(47条〜56条の7)[注1]に「管理組合法人」に関する規定を置いています。

ちなみに同章の第7節(57条〜60条)は「義務違反者に対する措置」に関する規定であり、第8節(61条〜64条)は「復旧及び建替え」に関する規定です。

第2章(65条〜70条)は「団地」に関する規定となり、第3章(71条〜72条)は「罰則」に関する規定です。

今回は、管理組合法人に関する基本的事項をいくつか確認しておきましょう。以下、区分所有法のことを単に「法」といいます。

法47条について
注1

1 平成14年改正前は、区分所有者の数が30人以上でなければ法人格を取得できませんでした[注2]が、平成14年改正で人数要件が撤廃されまし(法47条1項)。つまり少人数の団体も法人化が可能となりました。

2 管理組合法人の登記に関しては「政令で定める」とされています(法47条3項)。そして、組合等登記令(昭和39年3月23日政令第29号)が管理組合法人(団地管理組合法人含む)の登記に関して定めています。

政令(組合等登記令)に定める登記を怠ったときは、過料の制裁があります(法71条5項)。

<法71条5項について>

第71条 次の各号のいずれかに該当する場合には、その行為をした管理者、理事、規約を保管する者、議長又は清算人は、二十万円以下の過料に処する。
5 第四十七条第三項(第六十六条において準用する場合を含む。)の規定に基づく政令に定める登記を怠ったとき。


3 管理組合法人の成立前の集会の決議、規約及び管理者の職務の範囲内の行為は、管理組合法人につき効力を生じます(法47条5項)。

4 管理組合法人においては「管理者」(法25条以下参照)が存在しません。

また、管理組合「法人」といっても、一般の法人とは少し性質が異なります。

法47条6項前段[注1]は、「管理組合法人は、その事務に関し、区分所有者を代理する。」と規定していますが、この規定に関し、鎌野邦樹著『マンション法案内』(勁草書房、2010年)に分かりやすい説明がありますので引用しておきます。

鎌野邦樹著『マンション法案内』(勁草書房、2010年)152頁より引用

「ここで注意しなければならないのは、一般の法人の場合には、当該法人自体が終局的な権利(・義務)の主体であって、法人がその構成員(社員)を代理するなどということはありません。構成員は、法人を構成する単位であり、総会(社員総会)を通じてその意思が法人に反映させることはできますが、ただ、対外的には法人の中に吸収されてしまいます。これに対して、管理組合法人は、『本人』である区分所有者の『代理人』であり、その構成員である区分所有者は管理組合法人の中に吸収されてしまうわけではありません。」

法49条について
注1

管理組合法人には理事を置かなければなりません(法49条1項)。

理事が数人あるときは、各自管理組合法人を代表します(法49条4項)。

規約若しくは集会の決議によって、管理組合法人を代表すべき理事を定めることや、規約の定めに基づき理事の互選によって管理組合法人を代表すべき理事を定めることは可能です(法49条5項)。実務的には、理事複数名のうちから、いわゆる理事長のみを「代表すべき理事」と定めているところが多いようです。ちなみに、「代表すべき理事」のみが登記されることになります(組合等登記令2条4号)。

団地管理組合法人について

1 団地に関する規定である法66条[注3]は、47条ないし56条の7の規定(すなわち管理組合法人に関する規定)を準用しています。

つまり、法65条に規定する「団体建物所有者の団体」も法人格を取得し、「団地管理組合法人」となることができます。

<法65条について>

(団地建物所有者の団体)
第65条 一団地内に数棟の建物があって、その団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)がそれらの建物の所有者(専有部分のある建物にあって、区分所有者)の共有に属する場合には、それらの所有者(以下「団地建物所有者」という。)は、全員で、その団地内の土地、附属施設及び専有部分のある建物の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。


2 では、例えば法59条に定める「区分所有権の競売の請求」[注4]に関し、団地管理組合法人(全体)の「集会」決議をもとに、「団地管理組合法人」が訴えを提起することができるでしょうか?

これについては「できない」と解さざるを得ません。

そもそも、法66条[注3]は、法57条ないし60条を準用していないからです。

団地管理組合法人は、団地建物所有者の団体(法65条)が法人格を取得しているに過ぎません。法人格を取得したとしても「団地建物所有者の団体」であることに変わりません。

いわゆる団地管理組合(法65条参照)と、いわゆる棟管理組合(法3条参照)とは、あくまでも別の団体です。「団地管理組合法人」が成立したとしても、各棟の団体(法3条参照)が消滅するわけではありません。

(弁護士/平松英樹)



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注釈 NOTE

注1: 区分所有法第6節(47条〜56条の7)について(別紙参照)

注釈別紙はここをクリック!

注2: 平成14年改正前の区分所有法47条1項について

「第三条に規定する団体で区分所有者の数が三十人以上であるものは、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で法人となる旨並びにその名称及び事務所を定め、かつ、その主たる事務所の所在地において登記をすることによつて法人となる。」

注3: 区分所有法66条について(別紙参照)

注釈別紙はここをクリック!

注4: 区分所有法59条について

(区分所有権の競売の請求)
第五十九条 第五十七条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。 
2 第五十七条第三項の規定は前項の訴えの提起に、前条第二項及び第三項の規定は前項の決議に準用する。 
3 第一項の規定による判決に基づく競売の申立ては、その判決が確定した日から六月を経過したときは、することができない。 
4 前項の競売においては、競売を申し立てられた区分所有者又はその者の計算において買い受けようとする者は、買受けの申出をすることができない。

筆者紹介 PROFILE

平松英樹(ひらまつ・ひでき)

弁護士、マンション管理士。1968年(昭和43年)生まれ、1991年(平成3年)年早稲田大学政治経済学部卒業。不動産管理会社勤務を経て弁護士登録(東京弁護士会)。EMG総合法律事務所(東京都中央区京橋1丁目14番5号土屋ビル4階)、首都圏マンション管理士会などに所属。マンション管理、不動産取引・賃貸借(借地借家)問題を中心とした不動産法務を専門とし、マンション管理、不動産販売・賃貸管理、建築請負会社等の顧問先に対するリーガルサービスに定評がある。実務担当者を対象とする講演、執筆等の実績多数。著書に『わかりやすいマンション管理組合・管理会社のためのマンション標準管理規約改正の概要とポイント』(住宅新報社)ほか。