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弁護士平松英樹のマンション管理論

<連載第41回>

管理組合法人について(総論A)

2014/5/13

今回は「管理組合法人」について考えてみましょう。本連載第25回の続編となります。

法人化のきっかけ(理由)について

管理組合法人化のきっかけ(理由)は各管理組合によって様々ですが、例えば「不動産を取得するときの登記のため」ということもあります。

すなわち、現在の実務上、非法人の管理組合(権利能力なき社団)は、不動産所有の登記名義人になれません(最高裁昭和47年6月2日判決参照)。

仮に、非法人管理組合が取得した不動産について登記を具備しようとすれば、@理事長(ないし管理者等)の個人名で登記する方法、A全区分所有者の共有名義にする方法等が考えられますが、いずれの方法についても問題(または問題が生じる可能性)があり、そこでやむなく法人化を選択することもあります。

法人化の手続について

管理組合の法人化については、建物の区分所有等に関する法律(以下、「区分所有法」といいます。)や組合等登記令(昭和39年3月23日政令第29号)に則って進めていくことになります。

まず、区分所有法47条1項に基づき「法人となる旨」並びに「その名称」及び「事務所」について「区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議」が必要です。そして、「その主たる事務所の所在地において登記すること」で法人が成立します。

主たる事務所の登記は法人の成立要件です。ちなみに、主たる事務所のほか、従たる事務所の登記も可能です。この従たる事務所の登記は対抗要件となります(区分所有法47条4項)[注1]。

設立の登記は、設立に必要な手続が終了した日から2週間以内に、主たる事務所の所在地においてすることになります(組合等登記令2条1項)[注2]。

ここで「設立に必要な手続が終了した日」とは、法人となる旨並びにその名称及び事務所を定め、かつ、法人を代表すべき理事の選任手続を終了した日を指します。例えば、規約の定め(区分所有法49条5項)[注3]に基づき理事の互選によって管理組合法人を代表すべき理事を定めた日(その理事が就任を承諾した日)となることもあります。

法人の登記事項について

登記すべき事項は以下のとおりです(組合等登記令2条2項)[注2]。

1 目的及び業務
(補足説明)
 目的及び業務は、区分所有法3条に基づきます。例えば、「東京都・・区・・町・丁目・番・号の建物並びにその敷地及び附属施設の管理」というような記載となります。

2 名称
(補足説明)
 名称中に「管理組合法人」という文字を用いなければなりません(区分所有法48条1項)。

3 事務所の所在場所
(補足説明)
 管理組合法人の住所は、主たる事務所の所在地にあるものとされます(区分所有法47条10項[注1]、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律4条[注4])。
 主たる事務所は、管理すべき建物内(つまり当該マンション内)に置く必要はなく、例えば、管理会社内に主たる事務所を置くことも可能です。ただし、一般的には当該建物(マンション)内に置かれます。

4 代表権を有する者の氏名、住所及び資格
(補足説明)
 理事が数人あるときは、各自管理組合法人を代表するのが原則です(区分所有法49条4項)[注3]。
 ただし、規約若しくは集会の決議によって法人を代表すべき理事を定め、若しくは数人の理事が共同して管理組合法人を代表すべきことを定め、又は規約の定めに基づき理事の互選によって管理組合法人を代表すべき理事を定めることも可能です(区分所有法49条5項)[注3]。
 例えば、管理規約において理事長のみを「代表権を有する理事」と定めることも可能です。この場合理事長のみが代表権を有することになりますので、その理事長のみが「理事」として登記されます。
 登記上の「資格」は「理事」であり、代表理事や理事長という資格で登記されるわけではありません。

5 共同代表の定めがあるときは、その定め(組合等登記令別表)
(補足説明)
 前述したとおり、「数人の理事が共同して管理組合法人を代表すべきこと」(いわゆる共同代表)を定めることも可能です。この場合、例えば、「理事●●●●と同●●●●は共同してこの法人を代表する。」と登記されることになります。


法人の登記事項の変更について

登記事項に変更が生じたときは、主たる事務所の所在地においては2週間以内に、従たる事務所の所在地においては3週間以内に登記の変更をしなければなりません(組合等登記令3条1項、11条3項)[注5]。

例えば、理事の任期は原則として2年であり、ただし規約で3年以内の別段の期間の定めも可能です(区分所有法49条6項)[注3]が、そうすると少なくとも3年に1回は「理事」の変更の登記(退任、就任、あるいは重任等の登記)が必要になってしまいます。

管理組合法人の解散について

管理組合法人は、次の事由によって解散します(区分所有法55条)[注6]。

@ 建物(一部共用部分を共有すべき区分所有者で構成する管理組合法人にあっては、その共有部分)の全部の滅失
A 建物に専有部分がなくなったこと
B 集会の決議(区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数で決する)

なお、上記Bの場合、区分所有法3条の団体は当然に存続します。

管理組合法人が解散したときは、主たる事務所の所在地において2週間以内に解散の登記をしなければなりません(組合等登記令7条) [注7]。

清算中の管理組合法人の能力や清算人に関しては、区分所有法55条の2以下[注6]に定められています。

ちなみに、代表清算人の制度がないことから、仮に理事長のみを清算人にしたい場合、あらかじめその旨を規約に定めておくか、あるいは改めてその者のみを清算人に選任する趣旨の集会決議が必要です。

(弁護士/平松英樹)



バナースペース

注釈 NOTE

注1: 区分所有法47条については、別紙参照。

注釈別紙はここをクリック!

注2: 組合等登記令2条

(設立の登記)
第二条 組合等の設立の登記は、その主たる事務所の所在地において、設立の認可、出資の払込みその他設立に必要な手続が終了した日から二週間以内にしなければならない。
2 前項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。
 一 目的及び業務
 二 名称
 三 事務所の所在場所
 四 代表権を有する者の氏名、住所及び資格
 五 存続期間又は解散の事由を定めたときは、その期間又は事由
 六 別表の登記事項の欄に掲げる事項

注3: 区分所有法49条については、別紙参照。

注釈別紙はここをクリック!

注4: 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律4条

(住所)
第四条 一般社団法人及び一般財団法人の住所は、その主たる事務所の所在地にあるものとする。

注5: 組合等登記令3条1項、11条3項

(変更の登記)
第三条 組合等において前条第二項各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その主たる事務所の所在地において、変更の登記をしなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、出資若しくは払い込んだ出資の総額又は出資の総口数の変更の登記は、毎事業年度末日現在により、当該末日から四週間以内にすれば足りる。
3 第一項の規定にかかわらず、資産の総額の変更の登記は、毎事業年度末日現在により、当該末日から二月以内にすれば足りる。

(従たる事務所の所在地における登記)
第十一条 次の各号に掲げる場合(当該各号に規定する従たる事務所が主たる事務所の所在地を管轄する登記所の管轄区域内にある場合を除く。)には、当該各号に定める期間内に、当該従たる事務所の所在地において、従たる事務所の所在地における登記をしなければならない。
 一 組合等の設立に際して従たる事務所を設けた場合(次号に掲げる場合を除く。) 主たる事務所の所在地における設立の登記をした日から二週間以内
 二 合併により設立する組合等が合併に際して従たる事務所を設けた場合 合併の認可その他合併に必要な手続が終了した日から三週間以内
 三 組合等の成立後に従たる事務所を設けた場合 従たる事務所を設けた日から三週間以内
2 従たる事務所の所在地における登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。ただし、従たる事務所の所在地を管轄する登記所の管轄区域内に新たに従たる事務所を設けたときは、第三号に掲げる事項を登記すれば足りる。
 一 名称
 二 主たる事務所の所在場所
 三 従たる事務所(その所在地を管轄する登記所の管轄区域内にあるものに限る。)の所在場所
3 前項各号に掲げる事項に変更が生じたときは、三週間以内に、当該従たる事務所の所在地において、変更の登記をしなければならない。

注6: 区分所有法55条〜56条の7については、別紙参照。

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注7: 組合等登記令7条

(解散の登記)
第七条 組合等が解散したときは、合併及び破産手続開始の決定による解散の場合を除き、二週間以内に、その主たる事務所の所在地において、解散の登記をしなければならない。

筆者紹介 PROFILE

平松英樹(ひらまつ・ひでき)

弁護士、マンション管理士。1968年(昭和43年)生まれ、1991年(平成3年)年早稲田大学政治経済学部卒業。不動産管理会社勤務を経て弁護士登録(東京弁護士会)。EMG総合法律事務所(東京都中央区京橋1丁目14番5号土屋ビル4階)、首都圏マンション管理士会などに所属。マンション管理、不動産取引・賃貸借(借地借家)問題を中心とした不動産法務を専門とし、マンション管理、不動産販売・賃貸管理、建築請負会社等の顧問先に対するリーガルサービスに定評がある。実務担当者を対象とする講演、執筆等の実績多数。著書に『わかりやすいマンション管理組合・管理会社のためのマンション標準管理規約改正の概要とポイント』(住宅新報社)ほか。