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弁護士平松英樹のマンション管理論

<連載第42回>

共用部分の保存行為とは?

2014/5/27

今回は、共用部分の保存行為について考えてみましょう。

よく、「共用部分の保存行為は各区分所有者が単独ですることができる。」というような話を耳にしますが、この話はいったい何を目的としてなされるのでしょうか?

保存行為とは?

そもそも保存行為とは何なのでしょうか?

この点、例えば、『コンメンタールマンション区分所有法(第2版)』稻本洋之助・鎌野邦樹著(日本評論社、2004年)107頁には、「保存行為とは、共用部分を維持する行為(共用部分の滅失・毀損を防止して現状の維持を図る行為)であるが・・・たとえば、共用部分の点検や破損個所の小修繕等は保存行為に属する・・・」とあります。

また、『区分所有法改訂版』丸山英氣編(大成出版社、2007年)90頁には「共用部分の保存行為とは、物の価値を現状において維持するための行為である。たとえば、廊下の清掃や蛍光灯を交換したりするようなこと・・・」とあります。

これらの文献によれば「共用部分の点検や破損個所の小修繕等」あるいは「廊下の清掃」なども保存行為に該当するように思われます。

仮に、各区分所有者が単独で保存行為を行うことができるとすると、その帰結として、当該区分所有者は保存行為に要した費用を他の共有者(区分所有者)に対し「規約に別段の定がない限りその持分に応じて」求償することも考えられます(区分所有法19条、21条) [注1]。

区分所有法18条について

この点について、区分所有法18条は以下のとおり規定しています。

(共用部分の管理)
第十八条 共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
2 前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。
3 前条第二項の規定は、第一項本文の場合に準用する。
4 共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の管理に関する事項とみなす。

つまり、区分所有法18条1項但し書の「保存行為は、各共有者がすることができる。」という規定は「規約で別段の定め」をすることができるのです(同条2項)。例えば、保存行為についても管理組合ないし管理者が行う旨の規定も有効です。

そして、多くのマンション管理組合においては区分所有法18条2項に基づき「規約で別段の定め」をしているものと思われます。

例えば、「敷地及び共用部分等の管理については、管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする。」(マンション標準管理規約(単棟型)第21条1項本文参照)という規約を制定している団体(管理組合)の構成員(区分所有者)の意思としては、「保存行為をも含めて管理組合が行う」というもののはずです。

そうすると、このような定めがある以上、各共有者(区分所有者)は勝手に保存行為をして、それ(保存行為)を根拠に他の区分所有者に求償(区分所有法19条、21条参照)することは困難と解さざるを得ません [注2]。

ただし、「保存行為」の問題と、「事務管理」(民法697条以下)や「不当利得」(民法703条以下)の問題とは別です。つまり、保存行為とは別の法理(根拠)に基づいて、管理組合ないし管理者あるいは他の区分所有者に対して求償することはあり得るでしょう。

区分所有者は「廊下の清掃」もできないのか?

(極端な話として)上記のような規約の定めがある場合、各区分所有者は「廊下の清掃」もできないのでしょうか?

この点、上記のような規約制定者(当該団体構成員)の意思として、例えば区分所有者が共用廊下を清掃することまで禁止する趣旨ではないでしょう。ただし、「保存行為」を根拠とした費用の求償(区分所有法19条参照)については否定する趣旨のはずです。つまり、求償問題を生じない単純な清掃行為まで禁止する趣旨ではないと解されます。

結局、規約の定めの趣旨に照らして個別具体的に判断されるべき問題といえます。

まとめ

「共用部分の保存行為は各区分所有者がすることができる。」という話が出た場合、その話は何を目的としてなされているのかに注意する必要があります。

例えば、単に共用廊下の清掃をすることができるというレベルの話なのか、それとも清掃に要した費用を他の区分所有者に求償できるというレベルの話なのか、それによってその話の是非が変わってくるはずです。

保存行為の可否といった抽象議論はトラブルの元になりますので注意が必要です。

(弁護士/平松英樹)



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注釈 NOTE

注1: 区分所有法19条、21条

(共用部分の負担及び利益収取)
第十九条 各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。

(共用部分に関する規定の準用)
第二十一条 建物の敷地又は共用部分以外の附属施設(これらに関する権利を含む。)が区分所有者の共有に属する場合には、第十七条から第十九条までの規定は、その敷地又は附属施設に準用する。

注2: もちろん当該規約の定めを前提としても許容されている保存行為(各共有者が単独でなし得る保存行為)という解釈論はあり得るしょう。

筆者紹介 PROFILE

平松英樹(ひらまつ・ひでき)

弁護士、マンション管理士。1968年(昭和43年)生まれ、1991年(平成3年)年早稲田大学政治経済学部卒業。不動産管理会社勤務を経て弁護士登録(東京弁護士会)。EMG総合法律事務所(東京都中央区京橋1丁目14番5号土屋ビル4階)、首都圏マンション管理士会などに所属。マンション管理、不動産取引・賃貸借(借地借家)問題を中心とした不動産法務を専門とし、マンション管理、不動産販売・賃貸管理、建築請負会社等の顧問先に対するリーガルサービスに定評がある。実務担当者を対象とする講演、執筆等の実績多数。著書に『わかりやすいマンション管理組合・管理会社のためのマンション標準管理規約改正の概要とポイント』(住宅新報社)ほか。