<連載第47回>
住戸に附属する窓ガラスの交換等について
2014/10/28
今回は、マンション標準管理規約(単棟型)を前提に、住戸に附属する窓ガラスの交換について検討してみましょう。
以下、マンション標準管理規約(単棟型)を「標準管理規約」といいます。
専有部分か共用部分か?
まず、窓ガラスについて、専有部分か共用部分かが問題となります。
ここで、専有部分とは「区分所有権の目的たる建物の部分」(区分所有法2条3項)をいい、共用部分とは「専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物及び(区分所有法4条第2項の規定により)共用部分とされた附属の建物」(区分所有法2条4項)をいいます。
標準管理規約2条[注1]にも同趣旨の定義規定が置かれています。
そして、標準管理規約7条2項三号において、「窓枠及び窓ガラスは、専有部分に含まれないものとする。」と規定されています。
厳密に言えば、専有部分か共用部分かは規約によって定まるものではありません(建物の構造や機能等から決定されます)が、ここでは、建物の構造や機能等を踏まえても標準管理規約のような解釈になるという前提で論じます。
そうすると、「窓枠及び窓ガラス」は共用部分であるということになります。ただし、専用使用権が設定されています(標準管理規約14条)[注2]ので、各住戸の区分所有者は窓ガラス等の専用使用権を有しているということになります。
窓ガラスの管理について
窓ガラスの管理のうち、「通常の使用に伴うもの」については、専用使用権を有する者がその責任と負担においてこれを行わなければなりません(標準管理規約21条1項但し書)[注3]。
そのため、例えば、使用上の問題で、窓ガラスが破損してしまった場合には、専用使用権者がその責任と負担において「窓ガラスの入れ替え等」を行うことになります(標準管理規約コメント第21条関係)[注4]。
なお、ここで専用使用権者が行うことができるのは、あくまでも原状復旧までであり、仮に改良を伴うような場合には標準管理規約22条の問題となります。
窓ガラス等の改良について
標準管理規約22条は次のように定めています。
(窓ガラス等の改良) 第22条 共用部分のうち各住戸に附属する窓枠、窓ガラス、玄関扉その他の開口部に係る改良工事であって、防犯、防音又は断熱等の住宅の性能の向上等に資するものについては、管理組合がその責任と負担において、計画修繕としてこれを実施するものとする。 2 管理組合は、前項の工事を速やかに実施できない場合には、当該工事を各区分所有者の責任と負担において実施することについて、細則を定めるものとする。 |
同条に関しては、詳しいコメントが公表されていますので、そのまま紹介します。
第22条関係 ① 窓枠、窓ガラス及び玄関扉(玄関扉にあっては、錠及び内部塗装部分を除く。以下「開口部」という。)については、第7条第2項第二号及び第三号において専有部分に含まれないこととされていること、専有部分に属さない「建物の部分」については、第8条に基づく別表第2において共用部分とされていることから、開口部は共用部分として扱うこととなる。 ② また、区分所有法は、その形状又は効用の著しい変更を伴わない共用部分の変更について、集会の普通決議により決することを定めている。 ③ 第1項は、防犯、防音又は断熱等の住宅の性能の向上のため行われる開口部の改良工事については、原則として、他の共用部分と同様に計画修繕の対象とすべき旨を規定したものである。 ④ 第2項は、開口部の改良工事については、治安上の問題を踏まえた防犯性能の向上や、結露から発生したカビやダニによるいわゆるシックハウス問題を改善するための断熱性の向上等、一棟全戸ではなく一部の住戸において緊急かつ重大な必要性が生じる場合もあり得ることにかんがみ、計画修繕によりただちに開口部の改良を行うことが困難な場合には、各区分所有者の責任と負担において工事を行うことができるよう、細則をあらかじめ定めるべきことを規定したものである。 ⑤ また、第2項は、マンションでは通常個々の専有部分に係る開口部(共用部分)が形状や材質において大きく異なるような状況は考えられないことから、当該開口部の改良工事についてもその方法や材質・形状等をあらかじめ定型的に細則で定めることにより、その範囲内で行われるものについては施工の都度総会の決議を求めるまでもなく、各区分所有者の責任と負担において実施することを可能とする趣旨である。 ⑥ 「共用部分のうち各住戸に附属する窓枠、窓ガラス、玄関扉その他の開口部に係る改良工事であって、防犯、防音又は断熱等の住宅の性能の向上等に資するもの」の工事の具体例としては、防犯・防音・断熱性等により優れた複層ガラスやサッシ等への交換、既設のサッシへの内窓又は外窓の増設等が考えられる。 ⑦ 各区分所有者の責任と負担において行うことができるものとしてあらかじめ定型的な工事内容を定めるに当たっては、専門的知識を有する者の意見を聴くことを考慮する。 ⑧ 本条の規定のほか、具体的な工事内容、区分所有者の遵守すべき事項等詳細については、細則に別途定めるものとする。 ⑨ 申請書及び承認書の様式は、専有部分の修繕に関する様式に準じて定めるものとする。 |
さいごに(私見)
区分所有法18条[注5]と標準管理規約21条[注3]の関係を考えてみます。
「共用部分の管理」について、区分所有法18条1項但し書は、「保存行為は、各共有者がすることができる」と定めています。ただし、この規定は「規約で別段の定めをすること」ができます(同条2項)ので、標準管理規約では「敷地及び共用部分等の管理については、管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする」と定めています(標準管理規約21条1項本文)。
そのため、各区分所有者は、自由に保存行為ができるというわけではありません(本連載第42回参照)。
ただし、標準管理規約は、さらに(標準管理規約21条1項本文の)例外として「バルコニー等の管理のうち、通常の使用に伴うものについては、専用使用権を有する者がその責任と負担においてこれを行わなければならない」と規定しています(同条1項但し書)。すなわち、区分所有者に対し一定の管理責任を課す(その範囲で一定の保存行為をなすことも許容する)とともに、当該区分所有者から管理組合に対する費用償還請求を排除しているといえます。
(弁護士/平松英樹)