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弁護士平松英樹のマンション管理論

<連載第48回>

管理組合法人の解散について

2014/11/25

建物の区分所有等に関する法律(以下「法」といいます)3条[注1]に規定する団体は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で法人となることができます(法47条1項)。

法人化の手続については本連載第41回でも簡単に述べていますが、今回は管理組合法人の解散について考えてみましょう。

解散事由について

管理組合法人は、法55条[注2]に定める事由によって解散します。すなわち、①「建物(一部共用部分を共用すべき区分所有者で構成する管理組合法人にあっては、その共用部分)の全部の滅失」、②「建物に専有部分がなくなったこと」、あるいは、③「区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数」の「集会の決議」によって解散します。

解散した管理組合法人は、清算の目的の範囲内において、その清算の結了に至るまではなお存続するものとみなされます(法55条の2)。

ただし、上記①②による解散の場合と上記③による解散の場合とでは、現実的な事務処理が異なってきます。

具体的にいえば、上記③による解散の場合、「清算の目的の範囲内において、その清算の結了に至るまで」存続するに過ぎない清算法人(法55条の2)[注2]とは別に、「建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体」(ここでは便宜上「管理組合」といいます)が存在しています。そのため、「管理組合法人」解散後も、「管理組合」によって毎月の管理費等の徴収や各種維持管理(運営)費用の支出が行われます。つまり、清算手続の対象となる法人財産とは別に、管理組合の財産が存在していることになりますので、一応区別して処理する必要があります。なお、管理組合法人の残余財産の処理については後述します。

清算人の職務等について

清算人の職務は、①「現務の結了」、②「債権の取立て及び債務の弁済」、③「残余財産の引渡し」ということになります(法55条の6)[注2]。

また、清算人は、法55条の7に規定されているように「債権の申出の催告等」を行わなければなりません。

<区分所有法55条の7>

(債権の申出の催告等)
第五十五条の七 清算人は、その就職の日から二月以内に、少なくとも三回の公告をもつて、債権者に対し、一定の期間内にその債権の申出をすべき旨の催告をしなければならない。この場合において、その期間は、二月を下ることができない。
2 前項の公告には、債権者がその期間内に申出をしないときは清算から除斥されるべき旨を付記しなければならない。ただし、清算人は、知れている債権者を除斥することができない。
3 清算人は、知れている債権者には、各別にその申出の催告をしなければならない。
4 第一項の公告は、官報に掲載してする。

法55条の7第1項の期間の経過後に申出をした債権者(知れている債権者を除く)は、「管理組合法人の債務が完済された後まだ権利の帰属すべき者に引き渡されていない財産に対してのみ、請求をすることができる」ということになります(法55条の8)[注2]。ちなみに、理論的には清算から除斥される債権者も想定できますが、現実的にはほぼ「知れている債権者」(法55条の7第2項ただし書)に当たるものと思われます。

仮に清算から除斥された債権者であっても、法53条[注3]に基づく各区分所有者への請求まで否定されるものではありません。また、仮に管理組合法人が破産手続開始決定を受けたとしても(法55条の9)[注2]、区分所有者の責任(法53条)が消滅するわけではありません。したがって、債権者側からすれば、管理組合法人の清算手続において債権回収できなかったとしても、法53条に基づき各区分所有者へ請求する方法が残されているということになります。

区分所有者の責任については、株式会社における株主の責任や一般社団法人における社員の責任とは異なる性格を有していますので注意が必要です(なお区分所有法29条1項[注4]参照)。

清算手続終了後の残余財産について

管理組合法人の残余財産については、「規約に別段の定めがある場合を除いて、(法)第14条に定める割合と同一の割合で各区分所有者に帰属する」と定められています(法56条)[注2]。

団体(法3条)が消滅している場合には、残余財産を各区分所有者に分割帰属させてもよいのでしょうが、法55条1項3号の解散の場合には問題があります。

法55条1項3号の解散の場合には、前述したように法3条に定める団体すなわち「建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体」(通常は法人格なき社団)が存続しています。そのため、管理組合法人の残余財産については法3条の団体(法人格なき社団)に(いわば総有的に)帰属すると解した上で、各区分所有者からの分割請求を否定的に解すべきでしょう。

この点(集会決議による解散の場合の残余財産の帰属)については、管理組合法人の規約に定めておいた方がベターです。

(弁護士/平松英樹)



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注釈 NOTE

注1: 区分所有法3条
 (区分所有者の団体)
第三条 区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。

注2: 区分所有法55条~56条の7
 (解散)
第五十五条 管理組合法人は、次の事由によつて解散する。
 一 建物(一部共用部分を共用すべき区分所有者で構成する管理組合法人にあつては、その共用部分)の全部の滅失
 二 建物に専有部分がなくなつたこと。
 三 集会の決議
2 前項第三号の決議は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数でする。
 (清算中の管理組合法人の能力)
第五十五条の二 解散した管理組合法人は、清算の目的の範囲内において、その清算の結了に至るまではなお存続するものとみなす。
 (清算人)
第五十五条の三 管理組合法人が解散したときは、破産手続開始の決定による解散の場合を除き、理事がその清算人となる。ただし、規約に別段の定めがあるとき、又は集会において理事以外の者を選任したときは、この限りでない。
 (裁判所による清算人の選任)
第五十五条の四 前条の規定により清算人となる者がないとき、又は清算人が欠けたため損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、清算人を選任することができる。
 (清算人の解任)
第五十五条の五 重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、清算人を解任することができる。
 (清算人の職務及び権限)
第五十五条の六 清算人の職務は、次のとおりとする。
 一 現務の結了
 二 債権の取立て及び債務の弁済
 三 残余財産の引渡し
2 清算人は、前項各号に掲げる職務を行うために必要な一切の行為をすることができる。
 (債権の申出の催告等)
第五十五条の七 清算人は、その就職の日から二月以内に、少なくとも三回の公告をもつて、債権者に対し、一定の期間内にその債権の申出をすべき旨の催告をしなければならない。この場合において、その期間は、二月を下ることができない。
2 前項の公告には、債権者がその期間内に申出をしないときは清算から除斥されるべき旨を付記しなければならない。ただし、清算人は、知れている債権者を除斥することができない。
3 清算人は、知れている債権者には、各別にその申出の催告をしなければならない。
4 第一項の公告は、官報に掲載してする。
 (期間経過後の債権の申出)
第五十五条の八 前条第一項の期間の経過後に申出をした債権者は、管理組合法人の債務が完済された後まだ権利の帰属すべき者に引き渡されていない財産に対してのみ、請求をすることができる。
 (清算中の管理組合法人についての破産手続の開始)
第五十五条の九 清算中に管理組合法人の財産がその債務を完済するのに足りないことが明らかになつたときは、清算人は、直ちに破産手続開始の申立てをし、その旨を公告しなければならない。
2 清算人は、清算中の管理組合法人が破産手続開始の決定を受けた場合において、破産管財人にその事務を引き継いだときは、その任務を終了したものとする。
3 前項に規定する場合において、清算中の管理組合法人が既に債権者に支払い、又は権利の帰属すべき者に引き渡したものがあるときは、破産管財人は、これを取り戻すことができる。
4 第一項の規定による公告は、官報に掲載してする。
 (残余財産の帰属)
第五十六条 解散した管理組合法人の財産は、規約に別段の定めがある場合を除いて、第十四条に定める割合と同一の割合で各区分所有者に帰属する。
 (裁判所による監督)
第五十六条の二 管理組合法人の解散及び清算は、裁判所の監督に属する。
2 裁判所は、職権で、いつでも前項の監督に必要な検査をすることができる。
 (解散及び清算の監督等に関する事件の管轄)
第五十六条の三 管理組合法人の解散及び清算の監督並びに清算人に関する事件は、その主たる事務所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。
 (不服申立ての制限)
第五十六条の四 清算人の選任の裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
 (裁判所の選任する清算人の報酬)
第五十六条の五 裁判所は、第五十五条の四の規定により清算人を選任した場合には、管理組合法人が当該清算人に対して支払う報酬の額を定めることができる。この場合においては、裁判所は、当該清算人及び監事の陳述を聴かなければならない。
第五十六条の六  削除
 (検査役の選任)
第五十六条の七 裁判所は、管理組合法人の解散及び清算の監督に必要な調査をさせるため、検査役を選任することができる。
2 第五十六条の四及び第五十六条の五の規定は、前項の規定により裁判所が検査役を選任した場合について準用する。この場合において、同条中「清算人及び監事」とあるのは、「管理組合法人及び検査役」と読み替えるものとする。

注3: 区分所有法53条
 (区分所有者の責任)
第五十三条 管理組合法人の財産をもつてその債務を完済することができないときは、区分所有者は、第十四条に定める割合と同一の割合で、その債務の弁済の責めに任ずる。ただし、第二十九条第一項ただし書に規定する負担の割合が定められているときは、その割合による。
2 管理組合法人の財産に対する強制執行がその効を奏しなかつたときも、前項と同様とする。
3 前項の規定は、区分所有者が管理組合法人に資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、適用しない。

注4: 区分所有法29条
 (区分所有者の責任等)
第二十九条 管理者がその職務の範囲内において第三者との間にした行為につき区分所有者がその責めに任ずべき割合は、第十四条に定める割合と同一の割合とする。ただし、規約で建物並びにその敷地及び附属施設の管理に要する経費につき負担の割合が定められているときは、その割合による。
2 前項の行為により第三者が区分所有者に対して有する債権は、その特定承継人に対しても行うことができる。

筆者紹介 PROFILE

平松英樹(ひらまつ・ひでき)

弁護士、マンション管理士。1968年(昭和43年)生まれ、1991年(平成3年)年早稲田大学政治経済学部卒業。不動産管理会社勤務を経て弁護士登録(東京弁護士会)。EMG総合法律事務所(東京都中央区京橋1丁目14番5号土屋ビル4階)、首都圏マンション管理士会などに所属。マンション管理、不動産取引・賃貸借(借地借家)問題を中心とした不動産法務を専門とし、マンション管理、不動産販売・賃貸管理、建築請負会社等の顧問先に対するリーガルサービスに定評がある。実務担当者を対象とする講演、執筆等の実績多数。著書に『わかりやすいマンション管理組合・管理会社のためのマンション標準管理規約改正の概要とポイント』(住宅新報社)ほか。