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維持管理MAINTENANCE

被災マンション解体の要件を緩和

2013/2/12

法務省の法制審議会(会長:伊藤眞・早稲田大学大学院教授)は、2013年2月8日の総会で大規模災害により被災した分譲マンション解体の要件を緩和する法改正の要綱を決定し、法務大臣に答申しました。要綱では、「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法(被災マンション法)」を改正し、所有者全員の合意が必要な現行制度を改めて5分の4以上の多数決で可能とする新制度を提唱しています。これにより、今後は被災したマンションの解体がしやすくなり、被災地の復興や再開発の迅速化につながると期待されています。

5分の4以上の多数決による「取り壊し決議」を新設

今回の答申は、法制審議会の被災関連借地借家・建物区分所有法制部会が2013年1月にまとめた要綱案に基づくもの。同部会は、@今後想定される大規模な災害に備え、「罹災(りさい)都市借地借家臨時処理法」(罹災都市法)を早急に見直して、同法を現代の社会によりふさわしいものにする、A被災マンション法を早急に見直して、大規模な災害により重大な被害を受けた区分所有建物の取り壊しを容易にする制度を整備する、という二つの諮問を受けて、2012年9月から9回の会議を開催して検討を続けてきました。

被災マンション法改正の要綱では、大規模な災害により「重大な被害」(建物価格の2分の1超に相当する部分が滅失した場合)を受けたマンションについて、5分の4以上の多数決により建物を取り壊す旨の決議ができる制度(取り壊し決議制度)を設けるとしました。また、取り壊したあとの敷地利用に関しても、売却か建物再建かの選択を、持分の5分の4以上の賛成で決定できる制度を新設するとしました。

被災マンション法改正とあわせて答申された罹災都市法改正の要綱では、大規模災害で借家が全壊した場合、借り手側が優先的にその土地の借地権を取得できる制度を廃止し、最長5年を期限として更新がない「被災地短期借地権」を新設するとしました。これにより、被災地の復興にあわせて仮設住宅や仮店舗が造りやすくなることが期待されています。

現行法による「全員の同意」が被災地復興の足かせに

被災マンション法は、阪神・淡路大震災をきっかけに制定された特別法で、マンションが全壊した場合に「建物再建」の手続きを進めやすくしたものです。全壊の場合は、区分所有権そのものが消滅するため区分所有法の適用がなくなり、再建のためには「敷地利用権者全員の同意が必要」という民法が適用されることになります。このため、民法の適用を回避し、被災地の健全な復興を促進するため、1995年に制定されました。

しかし、同法は「建物再建」を前提としているため、「解体(取り壊し)」の場合には適用できませんでした。区分所有法でも、建て替えを前提とした規定はありますが、建物を取り壊して区分所有関係を清算する旨の規定は定められていません。このため、解体の場合は民法原則が適用されることとなり、「区分所有者全員の同意」が必要とされていました。

東日本大震災の被災地では、震災のため建物が傾いて居住者が退去したマンションなどで、解体・敷地売却による区分所有関係の解消が現実的な選択肢として検討されてきました。しかし、現行の法制度では「全員の同意」が必要となり、倒壊の危険があるようなマンションでも解体の手続きを円滑に進められないという深刻な問題が発生しています。

日本マンション学会では、こうした問題にいち早く警鐘を鳴らし、「少なくとも、非常事態においては多数決による区分所有解消、敷地処分が可能となる制度の創設が検討されるべき」との提言を2011年6月に公表しました[]。被災マンション法の改正案はこうした要望に応えるかたちとなりましたが、国会への提出と審議はまだこれからで、いちにちも早い成立が望まれます。

(編集部)




バナースペース

図版 CHART

文書1: 被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法の見直しに関する要綱案(案)(出典: 被災関連借地借家・建物区分所有法制部会資料)

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文書2: 罹災都市借地借家臨時処理法の見直しに関する要綱案(案)(出典: 被災関連借地借家・建物区分所有法制部会資料)

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注釈 NOTE

注: 一般社団法人日本マンション学会「東日本大震災によるマンション被害に対する緊急提言」(2011年6月11日)