長谷工アネシスがスマートマンション化を本格展開
2013/7/30
経済産業省が推進する「スマートマンション導入加速化推進事業費補助金」制度のサービス提供事業者(MEMSアグリゲータ)に採択された株式会社長谷工アネシスが、マンション向け高圧一括受電サービスの営業展開を本格的に開始しました。スマートメーターの導入を前提とした同社の電気料金削減メニューは、各住戸の電気利用量の“見える化”だけでなく、MEMS(マンションエネルギー管理システム)導入を視野に入れた将来対応可能な“スマートマンション化”を実現するもので、採用するマンションが急増しています。
高圧一括受電はスマートマンション化への第一歩
高圧一括受電は、マンション全体でまとめて電力会社から電力を購入し、高圧一括受電事業者が分配・計量・課金・徴収を行うサービスを指します。
一般に、マンションへ6600V(ボルト)で供給された高圧の電力は、マンション敷地内に設置された電力会社の変圧器(トランス)で100Vまたは200Vに変圧して共用部や専有部(各住戸)に供給され、変圧等の手間がかかっている分だけ割高な「低圧電気契約」となります。これに対し、「高圧電気契約」は手間がかからない分だけ割安となり、高圧一括受電事業者はこの料金差を利用して差額部分の一部をマンション管理組合に還元します[図参照]。
長谷工アネシスは、長谷工グループのマンション関連サービスを提供する事業グループの統括持株会社として、2003年に資本金20億円で設立されました。スマートマンション事業部では、スマートマンション化への第一歩として、電気料金削減と“見える化”を実現するスマートメーターを用いたマンション高圧一括受電サービスの提供を開始。初年度となる2013年3月までの1年間で2万戸の導入決定の実績を上げました。
マンションの高圧一括受電は、2004年ごろベンチャービジネスとして立ち上がりましたが、2011年の東日本大震災以降は節電・省エネの関心が高まり、大手企業の資本参加による異業種参入が相次いでいます。長谷工アネシスによれば、2013年までの導入済みマンションは全国で約10万戸超と推計されています。
対象は長谷工グループのマンションに限定せず
「電気料金が値上げされ、来年から消費税も上がるなか、管理費削減に関心が高い管理組合は、今できることを探している。弊社の一括受電サービスは、管理組合による初期導入費用なしで20%以上の電気料金が削減でき、電力会社と同じ品質と信頼性を維持できる点が評価されている」と、長谷工アネシス・スマートマンション事業部営業3部の部長、杉本憲彦氏は解説します。「2013年4月からは人員体制を3倍に増強し、年間6万戸の導入を目標としているが、このうち4万戸は既存マンションが対象。長谷工グループが管理するマンションには限定しません」。
マンション全体の削減部分を、共用部電気料金と専有部電気料金のどちらから削減するかは選択制で、ほとんどの場合「共用部割引」が選択されるといいます。割引は電力利用契約者のメリットとなるため賃貸運用している区分所有者には還元されないこと、また「専有部割引」の場合は割引月額が数百円で魅力が半減することなどが、おもな理由として挙げられます。
「サービス導入は、原則として50戸以上、築25年未満のマンションが対象で、オール電化やワンルームも節減効果が小さいため対象外。また、電力会社使用の電気室があることも条件となるが、最終的には現地調査に基づいて導入可否を判断する」と、事業企画部事業企画課の課長、野世渓卓也氏は説明します。「導入工事実施時と、導入後も原則として年1回の法定点検の際に一時停電することが、一括受電のほぼ唯一のデメリット。しかし、法改正や環境整備に向けた取り組みが進んでいるし、電力自由化が進めば電力購入の選択肢が増え、管理組合にとってさらにメリットがある新しい料金メニューの提供も可能となるでしょう」。
営業1部のチーフスタッフ、木内俊文氏によれば、現地調査から理事会の検討、住民説明会、総会決議、全戸契約手続きなどを経てサービス開始まで、通常は10〜12か月程度。ただし、最短で7〜8か月の例もあるとのこと。
省エネ・節電への関心が高まるなか、高圧一括受電導入がスマートマンション普及につながるかどうか、今後の動向が注視されます。
(取材・構成/編集部)