東京電力がマンション高圧一括受電サービスを開始
2014/8/19
東京電力株式会社は、2014年8月5日から分譲マンションを対象とした「スマートマンションサポートサービス」の営業・販売を開始すると発表しました。具体的には、マンションに高圧一括受電を導入して共用部の電気料金削減を図るというもの。大手電力会社のうち、高圧一括受電サービスを子会社等ではなく本体自らが提供するのは東電が初で、2016年4月から実施される電力小売の全面自由化に備え、顧客の囲い込みを図ろうとする電力各社の動きに拍車がかかりそうです。
ノウハウを生かした管理組合向けサポート
東電の「スマートマンションサポートサービス」は、高圧一括受電の導入を検討しているマンション管理組合等を対象に、高圧一括受電への切り替えに必要な電気設備の調達業務などをサポートするとともに、これまでのノウハウを生かして検針、料金請求・収納、電気設備の保安管理などのサービスを提供します。
報道資料によると、高圧一括受電の導入に伴い、電気の契約は各戸ごとからマンション一括での契約に変更することになり、マンション全体では共用部の電気料金を20〜40%程度削減することが可能となります。
ただし、サービス提供には次の条件があります。
●既設ガス併用分譲マンション(50戸以上/棟・ファミリータイプ)であること。
●東電が現在使用している電気室(室内タイプ)があり、無償で貸与できること。
●全戸の入居者の同意が得られること(各住戸の電気料金は削減対象としない)。
契約変更に伴う切替工事など導入時の費用を管理組合が負担することはありません。サービスの提供は、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の既設分譲マンションから開始し、順次拡大していく予定です。
東電が高圧一括受電に“お墨付き”の一面も
高圧一括受電は、マンション全体でまとめて電力会社から電力を購入し、高圧一括受電事業者が分配・計量・課金・徴収を行うサービスです。2004年ごろベンチャービジネスとして立ち上がりましたが、2011年の東日本大震災以降は節電・省エネへの関心が高まり、大手企業の資本参加による異業種参入が相次いでいます。
東電が高圧一括受電サービスを提供すると、電力会社本体としては電気料金収入の減少につながります。しかし、電力小売が自由化されると、理論上は各住戸が戸別に電力会社を選ぶことも可能となることから、マンション単位の高圧一括受電により顧客の囲い込みを図る効果があると考えられます。
一方、電気料金の値上げに消費増税が重なり、大規模なマンションでは共用部の電気料金削減が大きな課題となっています。東電の高圧一括受電サービス参入は、マンションにおける電気料金の削減策として「高圧一括受電は効果的」というお墨付きを与えた一面があります。
これまで、高圧一括受電に関心はあっても、重要なライフラインのひとつである電力供給の継続性や信頼性を考慮すると導入に踏み切れないでいた管理組合にとって、今後の選択肢は大きく広がったといえるでしょう。
(マンション管理士/波形昭彦)
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