豊島区が条例で名簿作成等を義務づけ
2013/1/29
東京都豊島区は、分譲マンションの管理に必要な事項を条例で示すことにより良好な維持管理を推進するため、「マンション管理推進条例」制定に向けた取り組みを進め、2012年12月に区議会が全会一致で可決。全国で初めて分譲マンションの管理に特化し、管理状況の届け出などを義務化した条例が、2013年7月1日から施行されることになりました。
推進会議を設置して条例制定を審議
豊島区では、区民の6割以上がマンションに居住しています。しかし、私有財産の集合体である分譲マンションには、戸建住宅や1棟オーナーマンションとは異なる、特有の問題点や課題があることが分譲マンション実態調査などで明らかとなりました。そこで、2012年1月、外部有識者と庁内関係部署による「豊島区マンション適正管理推進会議」[注]を設置し、条例制定に関する審議を続けてきました。
2012年9月1日に条例素案を公開してパブリックコメントの募集を開始し、9月20日には区長の月例記者会見で「11月の定例議会に提案して2013年7月施行を目指す」と発表したところ、テレビ・新聞など主要メディアが一斉に報道し話題となりました。
条例では、次の8項目を義務化したほか、適切な修繕の実施、旧耐震建物の耐震化、防災・防犯への対応、コミュニティの形成と活性化などを努力義務としました。
@管理規約等の作成及び保管・閲覧
A総会及び理事会議事録の作成及び保管・閲覧
B名簿等の作成及び保管
C設計図書、修繕履歴等管理に関する図書の適正保管
D連絡先の明確化(管理組合ポスト、緊急連絡先表示板の設置)
E法定点検及び設備点検・清掃の適切な実施
F長期修繕計画の作成
G町会と加入等について協議(未加入マンション対象)
マンション代表者(管理組合や所有者等)には管理状況の届け出を義務づけ、区長による指導・要請や勧告に従わない場合にはマンション名を公表する罰則規定があります。罰則を伴うマンション管理に特化した条例はこれまでに例がなく、全国初の取り組みとして注目されています。
名簿作成などに苦労する管理組合を支援
豊島区は、2010(平成22)年度に住宅課とは別に「マンション担当課」を設置するなど、分譲マンションの維持管理に関する先進的な取り組みを続けていることでも知られています。
2012年12月20日、豊島区は「平成24年第4回豊島区議会定例会」の結果について、議会の閉会に伴う恒例の報道発表を行い、条例案12件を含む計20件の議案を可決、7件の請願・陳情のうち4件を採択したことなどを報告。しかし、通常はここで終わる議会報告に続けて、「マンション管理推進条例」の可決については補足説明を加え、「共同住宅の適切な維持管理は、居住者が長く快適に住み続けることができるだけでなく、良好な住宅ストックの形成を図る上でも非常に重要であり、マンションの良好な維持管理の誘導を図っていく」と、あらためて区の“意気込み”を表明するかたちとなりました。
「条例の制定については推進会議での具体的な検討をお願いしたが、出される意見の内容はさまざまでも全て前向きなものばかり。個人情報の扱いなど事務局として慎重に対応すべき問題はあったが、全体としては思った以上に早く進めることができた」と、都市整備部マンション担当課長の園田香次氏は振り返ります。議員からの反対も少なく、外国人居住者が増えて苦労している管理組合を意識してか、名簿提出についてはもっと厳しくしたらどうかという意見が出るほどだったといいます。
また、条例制定の動向にマスコミが注目し、他の自治体や関連団体からの視察も相次ぐ状況については、「老朽化したマンションの実例がテレビなどで広く紹介されたことに加え、もともと多くの人が感じていた『こうなってはいけない』という潜在意識のあらわれではないか」(園田氏)と分析しています。
条例化という切り札が、困難に直面する管理組合役員の支援につながり、他自治体へも波及効果が広がるかどうか、今後の動向に引き続き注目が集まりそうです。
(2013年1月11日、取材・構成/編集部)