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生活管理RESIDENCE

千葉市が要件を備えた管理組合を自治会と認定

2013/5/14

千葉県千葉市は、2013(平成25)年度から、一定の要件を備えたマンション管理組合を、町内自治会と同様に取り扱うこととし、市民自治推進課が作成・配布している「町内自治会ハンドブック」の内容を一部改訂しました。地域における自治会の役割を踏まえ、管理組合として自治会連絡協議会へ加入することなどが必要条件となりますが、市との行政事務委託契約や地域的な会議への参加等により行政情報が入手しやすくなり、委託料等の収入が得られるメリットもあります。管理組合を名実ともに「自治会」として認めることを自治体(市町村)が公式に表明することは全国的にもめずらしく、今後の動向が注視されます。

3年越しの陳情が実を結ぶ

千葉市では、他の多くの自治体と同様、管理組合と自治会は構成員や目的が異なることから、同じ組織として位置づけることには無理が生じるケースがあるとして、マンションでは管理組合と別に自治会を設立することを推奨してきました。

しかし、2011年3月11日に発生した東日本大震災の教訓から、地域コミュニティの大切さや情報伝達の必要性が改めて認識されたために、条件付きながらマンションの管理組合を自治会と同様に取り扱うことを認めることとしました。

この方針転換の背景には、千葉市23地区町内自治会連絡協議会(地区連)による3年越しの陳情がありました。域内に大規模な団地型マンションが立地する同協議会では、実質的な自治会活動を行なっているマンションの管理組合を自治会として認めることは、自治会の加入率向上や居住者間情報の均一化、管理組合組織の効率化につながるとして、行政による管理組合の位置づけ変更を強く要望してきました。

この熱意が通じたのか、2012年12月20日に開催された地区連の会合に出席した熊谷俊人・千葉市長は、町内自治会の加入率向上を図るとともに、マンション管理組合に対する市の情報伝達を促進することを目的とし、一定要件のもと管理組合を自治会組織として認めていくことを発表しました[]。

千葉市による自治会施策の変更は、東日本大震災の影響で地域コミュニティにおけるマンションの存在を無視できなくなったことが大きな理由として挙げられますが、加入率が低迷する自治会の振興策が求められていたことのほか、最年少政令市長として知られる改革派の熊谷市長の英断があったともいわれています。

管理組合・自治会の合併が検討視野に

2001年の「マンション管理適正化法」施行にはじまる一連の法改正等の一環として、2004年には国交省が「改正マンション標準管理規約」を公表しました。このなかで、地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成を図ることが管理組合の業務に追加されるなど、マンションを取り巻く社会的環境は大きく変わってきています。

一方、管理組合とは別に独自のマンション自治会を設立し、マンションと地域コミュニティのつなぎ役となるだけでなく、実質的には行政関連団体等との相互協力関係を維持してきたマンションでは、自治会活動への理解不足や加入率の低迷、役員のなり手不足から自治会組織の存続が危ぶまれるケースが増えています。このため、最近では管理組合と自治会の合併を図るマンションも少なくありません。

管理組合・自治会の合併が総会決議等を経て実現したとしても、千葉市に限らず、全国のほとんどの自治体は「管理組合そのものを自治会とみなす」施策はとっていません。また、運用上の工夫で「管理組合を準自治会組織として認める」ような場合でも、管理組合としては次のような暫定措置をとる必要がありました。

●対外的には「自治会」を名乗り協議会等に加入する
●役員のうち1名が自治会長に就任または兼務する
●自治会長名義の銀行預金口座を別に開設する

今回、千葉市が管理組合の位置づけを改め、条件付きながら「管理組合を自治会として認める」との方針転換を図ったことで、上記の暫定措置は全て不要となります。名実ともに、管理組合が居住者の利益を代表する団体を兼務して行政機関等との交渉にあたることが可能となったといえるでしょう。

また、大きな波及効果のひとつとして、「所有者」だけでなく賃借人等を含む「居住者」の視点から管理組合業務を行う根拠が明確になることが期待されます。

区分所有法に連なる法体系では、原則的に管理組合の構成員(組合員)が「現に居住する区分所有者」と想定されているため、管理組合にとってその他の居住者、とくに賃借人は、組合員を通じた間接的な交渉対象として扱う傾向がありました。自治会を兼務する管理組合にとっては、賃借人も同居する家族も等しくマンションコミュニティの世帯構成員となります。

「居住者」を直接的な交渉対象と位置づけることで、管理組合による居住者情報の把握が行いやすくなる可能性もあり、“千葉市方式”が良き前例として周辺自治体に広まる可能性もあると思われます。

(マンション管理士/波形昭彦)




バナースペース

注釈 NOTE

注: 千葉市23地区町内自治会連絡協議会による陳情(要望)と市民自治推進課による回答の全文は次のとおり。
<要望>
 管理組合員が自治会活動を行っている管理組合を自治会として認めることは、自治会加入率向上に最も有効な方策であると考えます。
 メリット
 1.自治会加入率の向上
 2.管理組合内情報の均一化
 3.管理組合の組織の効率化
<回答>
 町内自治会の加入率の促進を図るうえから、また、市の情報をマンション管理組合に対しても伝えていきたいとの考えから、一定要件のもと、マンション管理組合を自治会組織として認めていく。
 要件としては、以下の3要件を考えており、市連協と相談し、要件を確定した後、「町内自治会ハンドブック」の改定など順次周知を図っていく。
 1.町内自治会の地域での役割を踏まえ、市連協(千葉市町内自治会連絡協議会)・区連協(区町内自治会連絡協議会)への加入について総会の議決を得ること。
 2.会員の任意性を担保するため、名簿からは加入を希望しない者を除外すること。
 3.会計処理等については、それぞれのマンション管理組合の判断に委ねる。

図版 CHART

文書: 千葉市「町内自治会ハンドブック」(出典: 千葉市・市民自治推進課のホームページ

筆者紹介 PROFILE

波形昭彦(なみかた・あきひこ)

マンション管理士。ぎょうせい、日経BP社、Time Inc. を経て、合資会社妙典企画を設立し代表に就任。首都圏マンション管理士会の本部広報委員、千葉県支部事務局長、市川市マンション管理組合連絡協議会事務局長などを歴任。現在、首都圏マンション管理士会城東支部・台東区マンション管理士会正会員。地域コミュニティの活性化を支援するコミュニティアドバイザーとして、ICT活用や電子自治体、コミュニティ形成関連の執筆・講演多数。著書に『あなたのマンションは狙われている!――安全・安心な暮らしのための防犯読本』(共著、同友館)ほか。