規制改革会議の答申にみるマンション生活の近未来
2013/6/11
政府の規制改革会議(議長:岡素之・住友商事相談役)は、2013年6月5日に第1回答申を取りまとめ、安倍晋三・首相に提出しました。答申には、マンション高圧一括受電サービスの導入推進やスマートコミュニティの普及、老朽化マンションの建て替え促進など、マンション生活にも影響がある提言が含まれています。
即効性・緊急性の高い規制改革130項目を提言
規制改革会議は、内閣総理大臣の諮問機関として2013年1月23日に発足。2016年3月31日までの約3年間、日本経済の再生を阻害する要因を除去し民需主導の経済成長を実現していくためため、規制改革を総合的に調査審議する予定です。今回は活動期間中の最初の答申提出となり、安倍内閣が掲げる成長戦略を構成する重要な基盤となる、即効性や緊急性の高い規制改革を優先的に検討した結果がまとめられています。
答申は、「エネルギー・環境」「健康・医療」「雇用」「保育」「創業」の5つを重点分野とし、130項目に及ぶ規制緩和策を提言しました。このうち、@一般用医薬品のインターネット販売、A保育サービスの規制緩和、B石炭火力発電に対する環境アセスメント、C電力システム改革などに関するものは、広く報道され注目を集めました。
答申には、このほか将来のマンション生活にも影響を与える、次のような提言が含まれています。
●マンション高圧一括受電サービスの導入推進
●自己保有電源比率の撤廃とスマートコミュニティの普及
●容積率の緩和と老朽化マンションの建替え促進
マンションの高圧一括受電
マンション等の集合住宅では、電力契約を住戸ごとの個別契約(低圧)から管理組合等による一括契約(高圧)に変更することによって、比較的割安な料金体系を適用することが可能です。また、エネルギー管理システム等の導入による電力消費の可視化やデマンドレスポンスなどの高付加価値サービスと連携させることで、高い省エネ効果が得られる点でも注目されています。
このため、一般電気事業者が電力供給している既築マンションを高圧一括受電に切り替える場合、受変電設備等についてマンション管理組合またはサービス事業者からの求めに応じて設備譲渡が公平に行われるよう、ルール化を検討すること(2013年度措置)が提言されました。
また、高圧一括受電するマンションの受変電設備の点検について、一定の要件を定めて停電を伴わない点検方法を認め(2013年度検討・結論)、
保安管理を外部委託により行う場合の停電点検を現行の原則年1回から3年に1回とできる要件設定(2013年度措置)もあわせて提言されました。
スマートコミュニティ
東日本大震災などがきっかけとなり、エネルギーの安定供給と地産地消を実現する「スマートコミュニティ」を推進するため、地域単位での再生可能エネルギー利用の普及やユーザーによる主体的な省エネ・創エネを可能とする環境整備が求められるようになりました。
このため、電気事業法に基づく許可を受けて密接な関係のある需要家へ自営線により電気を供給する非電気事業である「特定供給」について、許可基準における自己保有電源比率(50%)を撤廃し(2013年度検討・結論)、自治体・企業等で検討されている蓄電池・再生可能エネルギー・燃料電池などを活用した地域エネルギー管理システムの導入を促進することが提言されました。
また、スマートコミュニティの実現に不可欠な基盤となる次世代電力計「スマートメーター」についても、高圧以上の需要家に適用されるスマートメーター仕様の見直し(2013年度検討・結論)が提言されました。
老朽化マンションの建て替え
容積率等の既存不適格マンションは、総合設計制度の容積緩和手法などが適用されない限り、建て替え後の床面積が従前を下回ることになり、建て替えが進まない一因となっています。
このため、特例制度活用事例の調査と容積率の緩和(2013年度措置)が提言され、老朽化したマンションや既存不適格マンションの建て替えが円滑に進む環境整備が求められました。
また、単棟型や団地型のマンション建て替えを行う場合、区分所有者の合意形成が難航し、少数の反対が建て替え計画を止めてしまう不都合などが生じないよう、建て替え等を促進すること(2013年度検討・結論)もあわせて提言されました。
以上のような提言に強制力はありませんが、近未来のマンションと地域社会の姿を探るヒントとなりそうです。
(マンション管理士/波形昭彦)