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生活管理RESIDENCE

国が“脱法ハウス”の監視を強化

2013/8/20

マンションの室内を極端に狭く区分けして「シェアハウス」などと称する、いわゆる“脱法ハウス”に対し、国が監視を強化しています。国土交通省は、こうした建築物は建築基準法に違反する可能性があるとして、情報提供の受付窓口を開設したほか、関連団体に是正指導等の周知と情報提供を求める文書を送付しました。

業界団体の協力を求める文書を送付

ひとつの住居を複数の他人どうしでシェア(共有)するシェアハウスは、近年、新しい居住スタイルとして注目されています。

しかし、2013年5月、戸建て住居を改修した東京・中野区で運営するシェアハウスが、東京消防庁から消防法違反を指摘されたことが報道され、安全性などへの社会的関心が集まりました。

また、6月には東京・江戸川区の分譲マンションで、3LDK・63平方メートルの住戸を12人用のシェアハウスに改修する申請を管理組合が許可せず、区分所有者とトラブルになっていることが大きく報道され、マンションにおけるシェアハウスの問題が表面化しました。

国土交通省は、マンションの一住戸を改修したいわゆる脱法ハウスについては建築基準法違反の疑いがあるとして、7月12日付け文書[文書1]を一般社団法人マンション管理業協会と公益財団法人マンション管理センター宛てに送付。会員団体等への周知とあわせて、違法建築物を把握した場合には、改修工事の計画、工事に関与した建築士、建設業者の名称などの情報を自治体(特定行政庁)に提供することを求めました。

また、一般に脱法ハウスと呼ばれている建築物の呼称を「違法貸しルーム」としたうえで、7月19日付け文書[文書2]を建築士関係3団体と不動産業関係10団体、建設業関係団体にも送付し、同様に情報提供等を求めました。

上記2文書では、国土交通省による次のような見解が示されています。

●オフィス、倉庫等の用途に供していると称しながら多人数の居住実績がある建築物や、マンションの住戸または戸建て住宅を改修して多人数の居住の用に供している建築物は、「窓その他の開口部の面積」や「防火上主要な間仕切り壁の構造」などについて建築基準法違反の疑いがある。

●建築士が「違法貸しルーム」に関係する設計・工事監理等を行った場合には、建築士法第10条に基づく懲戒処分の対象となることがある。

●宅地建物取引業者が「違法貸しルーム」の疑いがある物件について、その事実を告げずに宅地建物取引業を行った場合には、宅地建物取引業法第47条に違反する可能性がある。仮に事実を告げた場合であっても、建築基準法違反の物件は、安全上の観点等から、特定行政庁から当該建築物の除却等を命じられることがあり、賃借人が当該物件から退去を余儀なくされるなど取引の相手方等に対し不測の損害を生じさせる懸念がある。

●マンションの住戸または戸建住宅のいずれであっても、「違法貸しルーム」を所有者から借受け賃借人に転貸する場合には、賃貸住宅管理業に該当することとなる。業務を実施するにあたっては、賃貸住宅管理業者登録規程(平成23年国土交通省告示第998号)に基づき賃貸住宅管理業の登録を受けるとともに、賃貸住宅管理業務処理準則(平成23年国土交通省告示第999号)に則って業務を実施することが望まれる。

●建設業者が受注した工事を施工中に、「違法貸しルーム」であるとして建築基準法第9条に基づき、特定行政庁より工事の施工の停止命令を受け、これに従わない等の場合には、建設業法の監督処分の対象となる。
国交省ホームページでも情報収集

国土交通省では、上記文書を送付した関係団体に限らず、「違法貸しルーム」に関する情報収集への協力を広く呼びかけています。6月10日付けの各特定行政庁宛て住宅局建築指導課長通知[文書3]とあわせて、国土交通省のホームページに「情報受付窓口」を設置し、MS-Word形式とPDF形式による情報提供様式を公開。情報提供のあった物件については、関係する特定行政庁に情報を提供するとしています。

このホームページでは、「違法貸しルーム」について次のような説明と例示が行われています。

多数の人が寝泊りなどをし実質的に居住していながら、各部屋の仕切りが燃えやすい材料でできている、窓がないなど建築基準法に違反している疑いのある建築物の存在が問題となっています。こうした建築物は、火災の際の安全面などで問題があると考えられます。

(例1)
木造2階建ての戸建て住宅や事務所ビルの1フロアを改造し、建具等で元々の部屋を人一人がようやく寝起きできる程度の広さの空間に区切って人が住んでいる。

(例2)
戸建て住宅地の中にありながら、貸しオフィスや貸倉庫として募集がされ、実際にはその建物で大勢の人が寝起きをしている。

シェアハウスの業界団体である日本シェアハウス・ゲストハウス連盟(任意団体)と一般社団法人日本シェアハウス協会では、市場の健全化をめざした独自の基準作成などに取り組んでいますが、一方で国による統一基準を求める声もあり、問題の解決にはまだ時間がかかりそうです。

(編集部)




バナースペース

図版 CHART

文書1: 「マンションの一住戸を改修して多人数の居住の用に供する
事案に係る情報提供の依頼について」(出典: 2013年7月12日付け国土交通省プレスリリース)

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文書2: 「建築基準法違反のある『違法貸しルーム』に係る関係団体への情報提供等の依頼について」(出典: 2013年7月19日付け国土交通省プレスリリース)

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文書3: 「多人数の居住実態がありながら防火関係規定などの建築基準法違反の疑いのある建築物に関する対策について」の概要(出典: 2013年6月10日付け国土交通省プレスリリース)

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図1: 違法貸しルームの平面イメージ(出典: 国土交通省のホームページ

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図2: 違法貸しルームの内観イメージ(出典: 国土交通省のホームページ

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