「違法貸しルーム」は寄宿舎に該当
2013/9/17
国土交通省は、「違法貸しルーム」に関する9月6日付け通知を関連団体に送付したことを公表しました。発表資料では、「貸しルーム」に建築基準法を適用する際の考え方について「従来からの本法の考え方を改めて示したものであり、建築基準法の解釈に新たに変更等を加えるものではない」としています。しかし、いわゆる“脱法ハウス”は建築基準法の「寄宿舎」の用途に該当すると明記し、建築基準法違反の疑いのある物件に関する情報収集へのさらなる協力を呼びかけています。
「用途」と「居室」の判断を明確化
国土交通省による9月6日付け通知は次の2件で、全文がホームページの報道資料として公表されています。
(1)特定行政庁宛て「多人数の居住実態がありながら防火関係規定等の建築基準法違反の疑いのある建築物に関する対策の一層の推進について(技術的助言)」[文書1]
(2)一般社団法人マンション管理業協会および公益財団法人マンション管理センター宛て「マンションにおける『違法貸しルーム』への対応について(依頼)」[文書2]
全国の自治体(特定行政庁)に宛てた(1)の通知では、これまでの通知になかった次の2点を明記し、引き続き立入調査や是正指導等を進めることを依頼しています。
●事業者が入居者の募集を行い、自ら管理する建築物に複数の者を居住させる「貸しルーム」は、従前用途や改修の有無等にかかわらず、建築基準法の「寄宿舎」の用途に該当する
●こうした「貸しルーム」の中で、特定の居住者が居住(就寝等)するために一定のプライバシーが確保され、独立して区画された各部分は、建築基準法における「一の居室」に該当する
以上の考え方に基づき、居室の採光(建築基準法第28条第1項)、建築物の間仕切壁(建築基準法施行令第114条第2項)等の規定を満たしていない場合、特定行政庁は違法建築物として是正指導を行う必要があります。
こうした「用途」や「一の居室」に関する判断を明文化することで、違反部分について確実な是正指導等が行われ、是正後にあらためて改修工事が行われて同様の違反形態となることを防ぐことが期待されます。
マンションでは区分所有者の理解と協力が必要
マンション関連2団体に宛てた(2)の通知では、(1)の技術的助言を添付資料としたうえで、マンションの居住者・区分所有者・管理組合向けの「違法貸しルーム」への対応に関する周知文の配布を依頼しています。
マンションの一住戸を簡単な壁で小さな空間に区切って多人数に貸し出す物件で、防火等の安全面で大きな問題のある事例が増えていることから、区分所有者が専有部分の改修を行おうとする場合に、関係法令に違反しないよう注意喚起が図られています。
また、国土交通省住宅局名による周知文「違法貸しルームへの対応について〜 居住者・区分所有者・管理組合のみなさまへ〜」では、次のような管理組合による対応も呼びかけられました。
●違法貸しルームへの改修の疑いのある物件を把握した場合は、特定行政庁に相談し、建築基準法違反である旨の情報が特定行政庁から提供された場合には、専有部分の改修を不承認として差し支えない
●管理規約に専有部分の改修についての承認規定を定めることや、承認規定について法令違反を不承認事由に定めることは、今後のトラブル防止に役立つこととなる
公益財団法人マンション管理センターでは、通知を受けて上記「周知文」をホームページで公開するとともに、全国の「特定行政庁連絡先一覧」[文書3]を添付資料として追加しました。
こうした一連の文書や情報の公表が、管理組合における状況判断の参考となることが期待されます。
(編集部)