本文へスキップ

マンション管理オンラインはマンション居住者と管理組合の視点に立った実務情報を提供する専門サイトです。

生活管理RESIDENCE

マンションコミュニティのはじめの一歩

2014/7/29

安心・安全・快適なマンションライフ

東日本大震災以後、マンションコミュニティの必要性が随所で語られるようになりました。一方で、以前からマンションは、鍵一つかければ安心で防犯対策が楽でよいといわれ、ご近所付き合いの煩わしさがないことをマンション住まいを選んだ理由にしている人も多くおります。多様な価値観の人が集まって住むマンションは無関心の集合体でコミュニティ形成が難しい居住形態であるといわれ、地域社会ではその無関心層がコミュニティ形成の妨げの要因に挙げられることも少なくありません。

マンションライフをエンジョイするためには、マンションコミニュティは必須です。このことは、マンションの管理会社の名称で○○コミュニュティとなっている会社が多くあることからもわかります。

マンション管理組合でコミュニティの必要性の話をすると、マンション管理組合は共用部分の維持管理をすることが役目なのでコミュニティは関係ない。まして管理組合の経費をコミュニティに使うのは「ケシカラン!」と顔をしかめる組合員さんたちが必ずいます。

しかし、理事長経験者の話として、大規模修繕工事を提案したがマンションコミュティがないために円滑な合意形成ができず人間不信に陥ったと嘆いていたケースもありました。

お金をかけずに身近なところからできるマンションコミュニティのケーススタディから、「マンションコミュニティのはじめの一歩」についてお話します。

「おはようございます」と「こんにちは」

あいさつはコミュニケーションの基礎であり、とくにマンションコミュニティにおい
ては重要な役割を果たします。

挨拶の基本は先手必勝です。相手が挨拶をしてくれるのを待つのではなく、自分から声をかける心構えが大切です。マンションでは、居住者の方はもちろんです管理員の方にも清掃員の方にも、自分が先に挨拶をするくらいの気持ちで日々を過ごすことをオススメします。

「相手より先に」の気持ちは、挨拶の基本的な考えた方ですので、相手も先に声をかけたいと思っているかも知れません。気付いたら、目が合ったら、挨拶です。円滑な人間関係は、そこから始まります。

挨拶は誰に対してもできることです。同じ屋根の下で生活する者同士、挨拶するのは当たり前で、挨拶されれば誰もが嬉しいものです。

まれに、自分から先に絶対に挨拶をしない人がいます。そのような人たち同士がすれ違えば、挨拶は交わされません。きっと、人付き合いが苦手で挨拶に慣れていないのかもしれません。そんな人でもこちらから挨拶をすれば、たいていは返事をしてくれます。もし返事をくれない人なら、割り切るか、何か理由は無いか考える必要もありますが・・・

もし相手が作業中の管理員さん、清掃員さん、配達中の宅配便のセールスドライバーさんなど、声を出して挨拶するのが無理な場合もあるので、そのときは会釈だけでもいいのです。挨拶がマンションコミュニティのはじめの一歩なるという気持ちがとても大切なのです。

警察署の「生活安全課」の担当者のお話では、たとえマンションに要塞のような塀を建てても、防犯カメラをたくさん設置しても、完全に侵入者を遮断することはできません。一番有効な方法は居住者どうしの「挨拶」なのです。犯罪者がねらったマンションの前に立ったときに居住者から「こんにちは」という挨拶をされると、そのマンションに侵入するのはあきらめるそうです。

これは、挨拶が励行されているマンションはコミュニティが形成されているため、自分の顔を「部外者」として記憶され犯人をとして特定される可能性があるからです。日頃から居住者同士が挨拶を交わすことや声を掛け合うコミュニティがあれば、それが「空き巣狙い」や不審者の侵入被害に一番有効な防犯対策になるそうです。

その上で、防犯カメラの設置など、ハード面での対策を立てます。居住者同士が気軽に挨拶ができる、声をかけやすい環境を作ることが、防犯対策になります。それに近所付き合いが活発になると、「振り込め詐欺」の被害に引っかかることも少なくなるそうです。

また、引っ越してきたときの挨拶も大切です。自分が引っ越してきたことを知らせるという意味だけではありません。近所に住んでいる人の顔の確認と自分や家族の紹介など、これからご近所付き合いを考えている方は必ず挨拶をしておくようにしましょう。引っ越しの時に挨拶をすることで、相手も自分のことが良くわかり安心して暮らす事ができからです。引っ越しの挨拶をしている住戸は、近隣と騒音などのトラブルが大きくなることも少ないというのが私の経験からの意見です。

マンションの表札

「最近のマンションは、表札が掲げられていないので、自分のマンションに誰が住んでいるのかわからない」という意見をよく聞きます。

表札を掲げていない居住者に理由を聞くと、郵便や宅配便の誤配、遅配もなく、特に不自由しないことや、地図の作成情報会社などにマンション居住者表を作られたくないということを理由としている人がいます。他人にそこに住んでいる言うことを知られたくないという微妙な不安感からの身を守る手段かもしれません。

しかし、マンションの1階エントランスにある集合ポストには、世帯主の氏名を明示することが法令で規定されています。郵便法第43条 (高層建築物に係る郵便受箱の設置) の規定により設置する郵便受箱について、郵便法施行規則第11条第5項では、「世帯主の氏名、事務所若しくは事業所の名称(屋号その他の称号を含む。)又は室番号を適宜の箇所に明示したものであること」と規定しています。

各住戸の玄関の表札は来客者やマンションの同じフロアーの居住者が最初に目にする部分なので、その印象は非常に重要なものです。表札を掲げていないと同じマンションの住民としては普通の近所づきあいを拒否されているような印象を持つといわれる方もおります。

しかし、たとえば女性一人暮らしともなると一人暮らしであることを知られたくないという心理が働き、表札を掲げることを躊躇してしまいます。女性一人暮らしでない場合でも、苗字が分かれば宅配業者などを装ってドアをあけさせることができますので、子供や家族が一人で留守番しているときに犯罪に巻き込まれることも不安になります。まれに、ご近所付き合いは、なるべく避けたいのでという方も時々おります。

このようにマンション居住者の考え方は多様で、マンションコミュニティに必要と言われる表札を掲げることについても価値観の違いから「これが正解」というものはありませんが、一度管理組合で話し合うことが大切です。

国土交通省が平成21年に管理組合等のコミュニティ形成の取り組みに関するインタビュー調査を実施しました。この調査の中で、「ソフトなコミュニティ」のイメージを図に表したのものが公表されていますので参考資料としてご参照ください。

(マンション管理士/松本 洋)




バナースペース

図版 CHART

図: ソフトなコミュニティによる防犯・防災、高齢者対応(出典: 国土交通省 国土交通政策研究所「マンションの適正な維持管理に向けたコミュニティ形成に関する研究」2010年5月、国土交通政策研究第91号)

(クリックして拡大)

筆者紹介 PROFILE

松本 洋(まつもと・ひろし)

マンション管理士、管理業務主任者、宅地建物取引主任者、測量士補、2級ファイナンシャルプランニング技能士、損害保険募集人(全種目)。不動産会社の賃貸物件営業開発、マンション用地開発、マンション売買会社責任者、マンション管理会社のフロントマネージャー、企業内マンション管理士などを経て、2012年に松本マンション管理士事務所開設。現在、首都圏マンション管理士会城東支部副会長、東京都マンション管理アドバザー、東京都高齢者住宅支援員、みらいネット登録補助者。台東区マンション管理士会、マンションコミュニティ研究会所属。著書に『買ったときより高く売れるマンション』(アーク出版)ほか。