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生活管理RESIDENCE

震災対応マニュアルに基づく実践的防災訓練

2014/12/30

神奈川県藤沢市のライオンズ湘南藤沢グランフォート管理組合は、2014年10月に株式会社大京アステージのサポートによる住民参加型の防災訓練を実施しました。当日は震災対応マニュアルに基づき、居住者安否確認、負傷者搬出訓練、建物被害の確認、ペット避難場所設置、防災備蓄品確認など実践的な訓練メニューを用意し、報道関係者にも訓練の模様を公開しました。

毎年テーマを決めて防災訓練を実施

「ライオンズ湘南藤沢グランフォート」(築4 年、8 階建て、144 戸)では、毎年テーマを決めて防災訓練を実施。第1回はAED 講習、第2回は消防訓練、第3回は起震車体験を行いました。4回目となる今回は「自立」というテーマで、管理組合が2年越しの検討を経て策定した「震災対応マニュアル」に基づく実践的な訓練を企画しました。

防災訓練は10 月4 日(土)午後1時30分から3時30分までの日程で実施し、防災訓練震災対策本部のメンバーでもある管理組合の役員を含めて約70人が参加。子ども連れの若いご夫婦の姿が印象に残りました。

まず「震災対応マニュアル」の概要を説明したあと、管理組合の役員が中心となって構成する4チームに分かれて、マンション全体を文字どおり駆け回る実践的な防災訓練が実践されました。

@情報チーム: 居住者安否確認(防災マグネット・安否確認シート使用)
 防災訓練参加者が訓練開始前に各住戸の玄関扉に貼付した安否確認のための防災マグネットを、安否確認シートを使用して一軒一軒確認していく訓練を実施

A救出・救護チーム: 負傷者搬出・応急措置(車イス活用)
 負傷者役の男性をマンション内(共用部)を捜索して見つけ出し、車イスなどを使って搬送・応急措置を行う訓練を実施

B安全チーム: 建物被害の確認、ペット避難場所設置(建物点検表・掲示文活用)
 マンション各所に設定された、さまざまな建物被害を想定した箇所を見つけ出し、状況を確認して建物点検表に記録する訓練と、同時にペット専用の避難場所を設定する訓練を実施

C物資チーム: 防災備蓄品確認(リストの整合および準備・給水方法確認)
 マンション内の防災備蓄倉庫にある防災備蓄品を、リストに基づき数などの整合を行い、また共用散水栓を利用して実際に給水方法を確認する訓練を実施

防災訓練震災対策本部には、各チームからトランシーバーで刻々と状況報告が入り、役員がホワイトボードにその内容を時系列に記載していきました。また、予定された訓練メニューが終了すると、各チームに分かれて、白い大きな模造紙を使って訓練の振り返りと課題のまとめを行いました。

訓練の振り返りと課題を共有

最後に、各チームが震災対策本部に集まり、全体ミーティングでそれぞれの課題などの共有を行いました。各チームからの報告内容と感想等は次のとおりでした。

@情報チーム
・避難のための動線が確認できる建物の見取り図(案内図)が必要。
・訓練中の他の班との情報共有が必要(トランシーバーが必要)。
・訓練を子ども連れで回るのは大変。
・防災訓練時、マンション上階からの俯瞰(ふかん)が有効(他班の動きも良くわかる)。

A救出・救護チーム
・中廊下はマンションの上階からの見通しが効くので、情報チームとの横の連携が取れると有効である。
・震災で実際に階段が崩壊するとたどり着けないところがある。
・救出・救護はどこまでやるのかの訓練も行いたい。
・エアーストレッチャーの使用は有効。
・負傷者の搬送時、階段の踊り場で回転できるかどうかも重要。

B安全チーム
・このマンションは大規模で構造が複雑なため、年に一度程度はマンション内を見て回る必要を感じた(マンションの構造が防災訓練で良く分かった)。
・居住者全体であらかじめ役割り分担をする必要あり。
・子供でも理解できる(防災訓練の)張り紙がよい。
・管理組合役員が不在時の対応をどうするかを決める必要がある。
・地域の自治会に入っていないと救援物資が届かないのではないか、確認必要。
・二次災害に備えて、安全確認の必要性の判断はどうするのか?(優先順位)

C物資チーム
・災害時の物資の搬出方法をどうするかを決める必要あり。
・各住戸への配布方法をどうするかを決めること(済・未済をはっきりさせること)。
・発電機が1台のみで大丈夫かの検討が必要(取扱説明書が難しい。いざというときに動かせるように通常から準備する必要がある)。
・子供がいる家庭の震災時の役割りをどうするかを決めること。
・住戸のガラス破損時には、ブルーシートが必要。
・ヘルメットなどの数の確保が必要。

全体的には終始、居住者の防災訓練に対する積極的で真険な姿勢が印象的な防災訓練でした。

管理会社が参加型防災訓練の実施を支援

大京アステージでは、東日本大震災以降、管理受託マンションへの防災の取り組みを強化しており、管理組合における住民参加型の防災訓練を促し、その実施をサポートしています。

東日本大震災では、約240棟のマンションを管理受託する同社東北支店の社員ののほか、全国から大京グループの社員が集結し、延べ100名が現地で復旧支援を行うなど、多くの社員が震災被害、復旧を経験しました。

こうした社内の体験談は、参加型防災訓練の重要性やマンション管理組合が備えるべき「防災7つ道具」(テレビの室内アンテナと発電機、ホワイトボード、キーボックス、バール・ハンマー、南京錠・クサリ、プラベニア、防災マニュアル)を紹介し、マンションの「共助力」を向上させるための取り組みに生かされています。

関連記事:
マンションの防災体制強化を管理会社が支援(2/3)(2012/12/11)

(取材協力/大京アステージ)




バナースペース

図版 CHART

写真1: 避難訓練の一場面

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写真2: 車イスを使用した負傷者の搬出訓練

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写真3: 防災訓練震災対策本部でトランシーバーによる状況報告を把握

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写真4: 最後に全体ミーティングで訓練の振り返りと課題を共有

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