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特集: 電気料金値上げ

産業用の電気料金値上げ、マンションにも影響

2012/5/15

東京電力株式会社が1月17日付けで公表した、自由化部門(産業用)電気料金の平均17%値上げに対し、値上げ実施月とされた4月に入ってからも納得できないとの反対意見が続出しています。また、今回の値上げは企業・団体等による産業用にかぎらず、高圧受電設備をもつマンションも対象となるため、その影響に波紋が広がっています。

1月26日にはいち早く、東電の大口顧客であり第三位の株主でもある東京都が、一方的な値上げに対する反対意見を表明。東電と経済産業大臣、原子力賠償支援機構に対し「電気料金の値上げに対する緊急要望」を文書で通知したことがマスコミで大きく報道されました。

東京都は、東電が値上げの根拠とした燃料費増加の内訳や経営合理化の具体的な内容が示されていないばかりか、「自由化部門」といっても電力市場は地域独占状態が続いていると指摘。東電以外の民間事業者に契約先を変更することは事実上困難で、地域独占の弊害による高コスト構造の実態が独自の調査であらためて明らかになったと強く非難しました。

また、一律に単価を上げる値上げの方法もきわめて便宜的で、電力需要のピークカットや抑制を促すような価格体系(料金メニュー)を設定しなければ、エネルギーの効率利用をかえって阻害する。さらに、経営基盤の脆弱な中小企業に与える影響も大きく特段の配慮が求められるなど、4点の「緊急要望」を表明しました。

川口商工会議所では、4月1日からの一律値上げを一方的に通知していた東電に強く反発し、中止や延期等を求めるさまざまな要請活動を展開してきました。東電は、当初「各企業との契約期間にかかわらず、値上げについての不満を申し出ない限り4月から値上げを実施する」としていましたが、世論に配慮するかたちで「契約期間内はすべて現在の単価とする」ことを了承し、3月には一律値上げの方針を撤回しました。

同商議所ではさらに、電気料金の値上げに同意できない場合、暫定的に従前の電気料金を支払うことを提案。政府認可が必用な規制部門(家庭用)電気料金の値上げ問題が解決するまで、自由化部門の値上げを延期してほしいとの申し入れも行いましたが、東電はどちらも拒否。こうした、電気料金の値上げを一方的に決定したことにはじまる東電の一連の行為は、独占禁止法が禁止する「優越的地位の濫用」と「不公正な取引方法」に該当するとして、4月11日付けで公正取引委員会に排除措置を求める申告を行い受理されました。

値上げの対象となる自由化部門は、契約電力が50キロワット以上の企業や団体などがおもな顧客となることから、一般に「産業用」と理解されています。しかし、高圧受電設備(キュービクル)を設置して高圧受電方式を採用している比較的大規模なマンションは、たとえ住居専用であっても値上げの対象となります。

たとえば、管理組合が高圧受電契約を締結している約260戸の単棟型マンションでは、共用部分の電気料金として年額約190万円を支出してきました。4月1日が契約更新日となるこのマンションでは、値上げ率は16.1%、年間電気料金の増加は33万7000円となる見込みです(東電試算)。

総戸数が700戸を超える11棟建ての団地型マンションでは、直近の決算による共用部分の電気料金が計約1400万円でした。このため、来期予算には少なくとも実績の17%にあたる238万円を上乗せすることが必要となりました。1戸あたりにすれば年間約3000円程度の増加とはいえ、団地管理組合全体の予算額としてみると突出した支出増といえます。

営利目的の企業であれば電気料金の値上げ分を価格に転嫁することもできますが、管理組合による電気使用の目的は共用廊下の照明やエレベーター・給水ポンプの動力など、基本的にはすべて「居住用」。支出増に対応するために管理費を値上げすれば、支払うことになるのは居住する区分所有者等の個人です。いずれ家庭用の電力料金が値上げされれば二重の負担増となることから、マンション管理関係者からは懸念の声があがっています。

(編集部)




バナースペース

用語 TERM

高圧受電と低圧受電

発電所から50万ボルト超の高圧送電線で各地の変電所に中継された電気は、利用者の用途に応じて特別高圧(2万ボルト)、高圧(6000ボルト)、低圧(200/100ボルト)に変圧して供給される。契約電力50キロワット未満の一般家庭や小規模事業所では、低圧受電契約に基づき電力会社が管理する変圧器(トランス)で調整した低圧電力を受電。50キロワット以上の電力を必要とする事業所などは、高圧受電契約に基づき高圧受電設備(キュービクル)を設置し、契約電力50キロワット以上の施設は高圧、2000キロワット以上は特別高圧の電気を直接受電する。電力会社のトランスを通さずに大量の電気を使用する契約方式のため、高圧受電の電気単価は低圧受電に比べて安くなる。

電力の自由化部門

政府が1995年から進めている電力市場自由化の一環として、東電など全国10社の一般電気事業者が地域独占してきた電力小売事業は、特定規模電気事業者(PPS)にも段階的に開放されてきた。まず2000年に、2000キロワット以上で受電する大口需要家を対象とする小売が認められ、2004年に500キロワット以上、2005年に50キロワット以上に拡大。現在、需要家が供給相手を自由に選ぶことができるようになった契約電力50キロワット以上は「自由化部門」、供給相手は一般電気事業者に限定されるものの、電気料金が電気事業法で規制・保護されている50キロワット未満は「規制部門」と呼ばれている。