マンション共用部の電気料金値上げに苦渋の決断
2012/5/15
東京電力株式会社の企業向け電気料金値上げにともない、マンション共用部分の電気料金支払いが大幅に増加するマンションが多数あり、社会問題化しています。全国の電力10社のうち東電を含む8社は赤字で、東電管轄外の地域も対岸の火事とはいえません。
5月14日までに出そろった2012年3月期連結決算では、北海道、東北、東京、中部、北陸、関西、四国、九州の8社が赤字。各社とも原発停止にともなう火力発電用の燃料費増加を主因としています。原発をもたない沖縄と、原発依存度が比較的低い中国の2社は、小幅ながら黒字となりました。
4月以降、契約期間満了となったマンション管理組合に対し、東電は「新料金による契約更新か電気の購入先変更か」を早急に判断するよう文書で通知しています。しかし、電力自由化がまだ不完全な途上にあるわが国において、契約先を東電以外の電力供給会社に切り替えることは、多くのマンションにとって現実的な選択肢とならないのが現状です。値上げに対して「納得できない」との意思表示を続けてきたマンションでも、電気の継続的供給を優先するための契約更新という苦渋の決断を迫られています。
しかし、当初、平均17%の値上げが一方的に通告され、契約期間にかかわらず4月1日から「一律値上げ」しようとしたことについては、異論が続出し社会問題化した経緯があります。マンション共用部分の電灯や動力に使用される電気料金が、企業等の事業目的による業務契約と同等に扱われることについても、疑問の声があがっています。
また、5月11日には、東電による家庭向け電気料金の平均10%の値上げが政府に申請され、消費者庁等による値上げ申請の検証が今後行われる見込みです。仮にこの申請が認可された場合、マンション居住者にとっては二重の電気料金値上げとなることから、社会的議論が一層活発に行われることは必至といえるでしょう。
こうした情勢を考慮すると、マンション共用部分の電気料金値上げが将来見直されるか、何らかの救済措置が検討される可能性も皆無とはいえません。その場合に、更新した電力需給契約の契約期間(1年間)が合意事項として優先され、契約期間中の料金変更(値下げ)の恩恵を受ける妨げとならないよう、東電と交渉してみる価値はあると思われます。
あるマンション管理組合では、「値上げを拒否できないのであれば、せめて一矢報いたい」として、契約更新に一定の条件をつけた交渉を続けています。具体的には、国・地方自治体等による制度改正や社会情勢の変化に応じた経営方針変更などにより、電気料金の値下げが可能となった場合には、契約期間の満了を迎える前であっても、速やかに管理組合と協議を開始する旨の文書による確約を求めています。
こうした事実上の特約設定に対しては強い反発が予想されますが、営業担当窓口が誠意ある対応を示さないような場合、契約更新で事態の幕引きを図ろうとする相手方を交渉のテーブルにつかせる効果は期待できるでしょう。また、「一律値上げ」の再発を防ぐため、契約期間中の電気料金の値上げについては事前協議に基づく合意を必要とする旨の再確認を求めることは、今回必要な最低限の交渉だと思われます。
(マンション管理士/波形昭彦)