宮城県管理士会が『震災とマンションII』を発刊
2013/2/12
一般社団法人宮城県マンション管理士会は、東日本大震災の教訓をまとめた冊子『震災とマンションII――経験した者が残すべきこと』を発刊しました。2001年のマンション管理士制度発足以来はじめて経験した大震災とこれに伴う行動の記録をまとめ、他の地域で予想される大震災に備えるしくみづくりに役立てることが趣旨。実体験に基づいた貴重な提言は、今後のマンションにおける防災と適正管理の推進を考えるうえで避けて通れない、多くの課題を問いかけています。
大震災から1年半を経て発災時の課題を検証
宮城県マンション管理士会では、2011年11月に開催された日本マンション管理士会連合会の第5回合同研修会仙台大会にあわせ、大震災から半年後の記録をまとめた冊子『震災とマンション』を刊行しました[注]。
続編となる今回の冊子は、大震災から1年半を経て、発災当時課題であったことの検証や掘り下げを行い、その後の復旧過程で生じた新たな課題を明らかにすることを目的に編集を開始。2013年1月の第6回合同研修会埼玉大会でも話題になりました。
収録文の目次は次のとおりです。
I. 3.11大震災は、マンションにとって何であったのか?
II. 震災後1年半を経過したマンション被災と復旧の現状
III. 東日本大震災で活用した諸制度の仕組みと見直しが必要な問題点
1. 応急修理制度の仕組みと現実に活用した問題点と事例
2. 公費解体制度の仕組みと現実に活用した問題点と事例
3. 義援金・支援金・地震保険の仕組みと問題点
4. 管理組合の防災対応から見えてきた問題点と見直し事例
5. メディアが全国に伝えた「東日本大震災とマンション被害」
IV. 激論・東日本大震災から1年半を振り返る(9月11日開催座談会)
小林秀樹(日本マンション学会会長・千葉大学工学部教授)
廣田信子(マンションコミュニティー研究会代表)
堀切俊秀(まちみらい千代田住宅まちづくりグループ)
萩原孝次(宮城県マンション管理士会会長)
「マンションの被害は軽微」だったか?
宮城県マンション管理士会会長の萩原孝次氏は、大震災は「マンションとは何かを改めて考えさせられるもの」だったとし、次のように述べています。
震災直後から、「マンションの被害は軽微…」「雑壁とエキスパンションジョイントは壊れて当然…」「住宅応急修理制度は共用部分には適用できない…」などの許しがたい不見識の喧伝に直面し、災害復旧に追われながらも、同時にこれらの不見識との戦いを余儀なくされました。
(「発刊にあたって」より)
また、同士会では、日本建築学会の被災度判定基準による「大破0棟、建て替えが必要な被害はなかった」とする被害状況は、建物の主要構造体の損傷のみを評価したもので被害者の生活実感に基づいていないとし、
●仙台市内では全壊判定が130棟以上、分譲マンションの1割近くが全壊
●仙台圏のアンケート調査を行った356棟中、全壊38棟(10.7%)、半壊以上182棟(51.1%)
●仙台市内で被災のため取り壊しを予定しているマンションは5棟以上
(「II. 震災後1年半を経過したマンション被災と復旧の現状」より)
今後、深刻な問題として現在進行中の被災マンションにおける紛争と訴訟についてまとめた『震災とマンションIII』が、2013年9月ごろ発刊される予定とのこと。関係者各位による研究と情報発信の継続が期待されます。
(編集部)