仙台市が「防災力向上マンション認定制度」を創設
2013/3/12
宮城県仙台市は、マンションにおける防災活動のさらなる充実と建物の防災性能の向上を図ることを目的した、「杜の都 防災力向上マンション認定制度」を創設し、2013年(平成25年)4月から運用を開始すると発表しました。
2月12日に行なわれた市長記者会見では、この認定制度の運用に先立ち策定した「分譲マンション防災マニュアル作成の手引」をあわせて公表しました。
仙台市では、独自の認定制度の利用と防災マニュアルの作成を通じて、マンション居住者による自主的な防災活動を支援していく計画です。
マンションの災害対応力の向上が必要
仙台市の資料によると、、東日本大震災により市内で最大震度6強(宮城野区)の強い揺れを観測。東部沿岸地域では、推定7.2メートル(仙台港)の津波により、家屋の浸水やライフライン施設の損壊など、大きな被害がありました。また、丘陵部地域では、擁壁崩壊・地すべり等が発生し、5080件にのぼる宅地が被災しました。
また、市内の約1400棟の分譲マンションでも、倒壊に至るマンションはなかったものの、100棟以上が「全壊」の
一方、マンション居住者同士の支え合いで、非常時の不便な生活環境を乗り切った事例も報告され、これまでの「ハード」面の取り組みだけではなく、自助・共助を基本とする災害対応力など「ソフト」面の取り組みが求められています。
こうした背景から、仙台市ではマンションの防災力を市が認定する制度を創設するとともに、地震災害時の共助による組織的な防災活動のルールをまとめたマニュアル作成を支援するための手引書を策定することとしました。
防災への取り組みを段階的に評価
「杜の都 防災力向上マンション認定制度」は、「建物性能」と「防災活動」の二つの項目でマンションの防災力を評価します。取り組みの内容や活動段階などにより、それぞれの項目を星の数(最大二つ星)で認定し、建物性能と防災活動のすべての項目に取り組んだ場合は最大の四つ星評価となります[図1参照]。
建物性能としては、備蓄倉庫や耐震ドアなどの設置に加え、建物全体の耐震性が評価項目となり、防災活動としては、防災マニュアル作成や防災訓練、防災備蓄の実施などに取り組む管理組合または自治会の活動が評価されます。
このほか、地域の避難所運営委員会事前協議等への参加や、地域の防災訓練への参加などの評価基準も設け、地域住民とのコミュニティ形成や地域避難所との連携などを促します。
認定したマンションは市のホームページに掲載し、入居先を選ぶ際の参考としてもらうとともに、防災意識の向上を図ります。仙台市によれば、こうしたマンションの認定制度は全国初といいます。
被災経験を生かしたマニュアル作成の手引き
防災マニュアル作成の手引きは、マンション管理組合による組織的な防災活動のルールづくりなどの参考として、2013年1月に策定され、仙台市のホームページに全文が公開されました。
防災マニュアルの作成手順に沿ったわかりやすい構成としているほか、東日本大震災で明らかになったマンション独自の課題や、被災時における防災活動の具体的事例を盛り込んだ、実践的な内容となっています。
また、マンションで利用できなかった公的支援制度や、被災程度により保険金額に大きな差がある現行の地震保険、区分所有者の全員合意が高いハードルとなった建物解体など、復旧・修繕をめぐる制度上の問題が今後の検討課題として挙げられています。
実体験に基づいた優れた手引きとして、今後広く活用されることが期待されます。
(編集部)