<連載第4回>
一部共用部分について
2012/10/16
今回は、最近の裁判例(東京地裁平成24年9月21日判決)を踏まえ、「一部共用部分」について、あらためて確認してみましょう。
Q 一部共用部分とは何か?
一言で説明すれば、「一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分」ということになります[注1]。
Q 「一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分」は、規約によって定まるのか?
一言で答えれば「NO」です。
この点、「マンション標準管理規約(複合用途型)第8条」[注2]が国土交通省から公表されていることもあり、「一部共用部分」の範囲も規約の「別表」等で定めることができるはず、とお考えの方もいるようです。
しかし、本来の意味の「一部共用部分」[注1]は、規約の定めとは無関係です。
ちなみに、「コンメンタールマンション区分所有法(第2版)」稻本洋之助・鎌野邦樹著(日本評論社、2004年)74頁によれば、「たとえば、ABCDが居住する一棟のマンションにおいて2つの階段ないしエレベーターがあり、一方はABだけが使用し、他方はCDだけが使用する構造であった場合には、それらはいずれも一部共用部分である。これらは、当該共用部分の客観的性質によって定まるのであって、規約の定めによるものではない。」とされています。
Q 区分所有法第11条2項により、一部共用部分も「規約で別段の定めをすることを妨げない」のではないか?
まず、区分所有法第11条を確認しておきましょう。
(共用部分の共有関係) 第11条 共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。ただし、 一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有に属する。 2 前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。ただ し、第27条第1項の場合を除いて、区分所有者以外の者を共用 部分の所有者と定めることはできない。 3 民法第177条の規定は、共用部分には適用しない。 |
区分所有法第11条は、共用部分の「共有関係」に関する規定です。
たしかに、同条2項の解釈上、いわゆる全体共用部分について、ある特定(少数)の区分所有者の共有とする旨の定めや、一部共用部分について、区分所有者全員の共有とする旨の定めなどは「妨げない」ということになります。
しかし、本来の一部共用部分の範囲が、「別段の定め」によって広がったり狭まったりするのではありません。
ちなみに、「改訂版区分所有法」丸山英氣編(大成出版社、2007年)83頁の表現を借りれば「これらの共用部分の所有者の人数は、規約で増減することができる」ということなのです。
Q 一部共用部分かどうかは、どのような基準で判断されるのか?
この点、最近の裁判例(東京地裁平成24年9月21日判決)の表現をそのまま借りると以下のとおりです。
「数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならない共用部分(法2条4項、4条1項)とされ、そのうち一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな部分は一部共用部分とされる(法3条2文)。そして、一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分かどうかは、建物の構造上及び機能上の見地から判断すべきである。」
Q バルコニーは「一部共用部分」と言えないのか?
この点、バルコニーが専有部分と判断された裁判例(東京地裁平成4年9月22日判決)[注3]もあることから、バルコニーが一部共用部分と判断されるケースも否定できませんが、一般的なバルコニーは、「建物の構造上及び機能上の見地から」一部の区分所有者のみの共用に供されることが明らかとは言えないでしょう。
もちろん、「建物の構造上及び機能上の見地から判断」されますので、ケースバイケースとなることは否定できません。
Q 一部共用部分の管理は誰が行うのか?
「一部共用部分」にあたる場合でも、その「管理」はついては、区分所有法第16条[注4]の規定に従って「管理」されることになります。
ちなみに、区分所有法第3条2文[注1]の解釈上、一部共用部分をそれらの区分所有者が「管理するとき」は、同条1文と同様、当該一部共用部分の区分所有者は「団体を構成し、……管理者を置くことができる」ということになります。
(弁護士/平松英樹)