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弁護士平松英樹のマンション管理論

<連載第23回>

団地の建替え決議について(総論)(1/2)

2013/8/6

今回は団地の建替え決議について考えてみましょう。

区分所有法は、第2章(65条〜70条)で「団地」に関する規定を置いています。そのうち、69条及び70条は団地の建替えに関する特則ですが、これらは2002(平成14)年改正法で新設されました。

今回は、この二つの条文を簡単に確認しておきましょう。

はじめに

区分所有法上の団地(区分所有法65条参照)[注1]については、団地内の建物すべてが戸建て建物であるということもあり得ます。

そのような戸建て建物所有者全員が団地の敷地を共有しているとしても、区分所有法69条や70条が適用されることはありません。

その場合、共有土地上の建物の建替えは共有物(土地)の変更に当たると解されますので、土地共有者全員の同意が必要になります(民法251条)[注2]。

区分所有法69条について

1 条文

(団地内の建物の建替え承認決議)
第六十九条 一団地内にある数棟の建物(以下この条及び次条において「団地内建物」という。)の全部又は一部が専有部分のある建物であり、かつ、その団地内の特定の建物(以下この条において「特定建物」という。)の所在する土地(これに関する権利を含む。)が当該団地内建物の第六十五条に規定する団地建物所有者(以下この条において単に「団地建物所有者」という。)の共有に属する場合においては、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める要件に該当する場合であって当該土地(これに関する権利を含む。)の共有者である当該団地内建物の団地建物所有者で構成される同条に規定する団体又は団地管理組合法人の集会において議決権の四分の三以上の多数による承認の決議(以下「建替え承認決議」という。)を得たときは、当該特定建物の団地建物所有者は、当該特定建物を取り壊し、かつ、当該土地又はこれと一体として管理若しくは使用をする団地内の土地(当該団地内建物の団地建物所有者の共有に属するものに限る。)に新たに建物を建築することができる。
 一 当該特定建物が専有部分のある建物である場合 その建替え決議又はその区分所有者の全員の同意があること。
 二 当該特定建物が専有部分のある建物以外の建物である場合 その所有者の同意があること。
2 前項の集会における各団地建物所有者の議決権は、第六十六条において準用する第三十八条の規定にかかわらず、第六十六条において準用する第三十条第一項の規約に別段の定めがある場合であっても、当該特定建物の所在する土地(これに関する権利を含む。)の持分の割合によるものとする。
3 第一項各号に定める要件に該当する場合における当該特定建物の団地建物所有者は、建替え承認決議においては、いずれもこれに賛成する旨の議決権の行使をしたものとみなす。ただし、同項第一号に規定する場合において、当該特定建物の区分所有者が団地内建物のうち当該特定建物以外の建物の敷地利用権に基づいて有する議決権の行使については、この限りでない。
4 第一項の集会を招集するときは、第六十六条において準用する第三十五条第一項の通知は、同項の規定にかかわらず、当該集会の会日より少なくとも二月前に、同条第五項に規定する議案の要領のほか、新たに建築する建物の設計の概要(当該建物の当該団地内における位置を含む。)をも示して発しなければならない。ただし、この期間は、第六十六条において準用する第三十条第一項の規約で伸長することができる。
5 第一項の場合において、建替え承認決議に係る建替えが当該特定建物以外の建物(以下この項において「当該他の建物」という。)の建替えに特別の影響を及ぼすべきときは、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める者が当該建替え承認決議に賛成しているときに限り、当該特定建物の建替えをすることができる。
 一 当該他の建物が専有部分のある建物である場合 第一項の集会において当該他の建物の区分所有者全員の議決権の四分の三以上の議決権を有する区分所有者
 二 当該他の建物が専有部分のある建物以外の建物である場合 当該他の建物の所有者
6 第一項の場合において、当該特定建物が二以上あるときは、当該二以上の特定建物の団地建物所有者は、各特定建物の団地建物所有者の合意により、当該二以上の特定建物の建替えについて一括して建替え承認決議に付することができる。
7 前項の場合において、当該特定建物が専有部分のある建物であるときは、当該特定建物の建替えを会議の目的とする第六十二条第一項の集会において、当該特定建物の区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、当該二以上の特定建物の建替えについて一括して建替え承認決議に付する旨の決議をすることができる。この場合において、その決議があつたときは、当該特定建物の団地建物所有者(区分所有者に限る。)の前項に規定する合意があつたものとみなす。

2 総論

はじめに述べたとおり、共有土地上の建物の建替えは基本的には共有物(土地)の変更に当たります。民法の規定に従うと、土地共有者全員の同意が必要ということになります。

しかし、区分所有建物には多数の区分所有者が存在しており、その全員の同意を得ることなど事実上困難です。区分所有建物が複数棟存在しているような場合は尚更です。

そこで、2002(平成14年)改正区分所有法は、多数決原理を導入することでこの問題を解決しました。

すなわち、下記(1)の前提要件のもとで、下記(2)の建替え承認決議が得られたときは、当該特定建物の建替えが可能とされました。

(1)前提要件
 @一団地内にある数棟の建物(「団地内建物」という。)の全部又は一部が専有部分のある建物であること(つまり少なくとも1棟以上は区分所有建物であること)
 Aその団地内の特定の建物(「特定建物」という。)の所在する土地(これに関する権利を含む。)が当該団地内建物の第65条 [注1]に規定する団地建物所有者の共有に属すること

(2)建替え承認決議
 当該土地(これに関する権利を含む。)の共有者である当該団地内建物の団地建物所有者で構成される第65条に規定する団体又は団地管理組合法人の集会において議決権の4分の3以上の多数による承認の決議

3 注意事項

上記の建替え承認決議の「議決権」については、必ず土地の持分の割合によることになります。建替え承認決議は、共有の土地に関わる問題だからです(マンション標準管理規約(団地型)第49条4項本文[注3]参照)。

ちなみに、区分所有法69条1項各号に定める要件に該当する場合の当該特定建物の団地建物所有者は、建替え承認決議においてはこれに賛成する旨の議決権の行使をしたものとみなされます(区分所有法69条3項本文)。

ところで、当該特定建物が区分所有建物の場合の建替え決議(区分所有法62条1項)[注4]の「議決権」については区分所有法38条[注5]によることになります。つまり、規約に別段の定めがあればそれによります(マンション標準管理規約(団地型)第73条3項[注6]参照)。

次ページへ続く)



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注釈 NOTE

注1: 区分所有法65条
(団地建物所有者の団体)
第六十五条 一団地内に数棟の建物があって、その団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)がそれらの建物の所有者(専有部分のある建物にあって、区分所有者)の共有に属する場合には、それらの所有者(以下「団地建物所有者」という。)は、全員で、その団地内の土地、附属施設及び専有部分のある建物の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。

注2: 民法251条
(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。

注3: マンション標準管理規約(団地型)第49条(別紙参照)

注釈別紙はここをクリック!

注4: 区分所有法62条(別紙参照)

注釈別紙はここをクリック!

注5: 区分所有法38条
(議決権)
第三十八条 各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、第十四条に定める割合による。

注6: マンション標準管理規約(団地型)第73条
(棟総会の会議及び議事)
第73条 棟総会の議事は、その棟の区分所有者総数の4分の3以上及び第71条第1項に定める議決権総数の4分の3以上で決する。
2 次の各号に掲げる事項に関する棟総会の議事は、前項にかかわらず、議決権総数の半数以上を有する区分所有者が出席する会議において、出席区分所有者の議決権の過半数で決する。
 一 区分所有法第57条第2項の訴えの提起及び前条第二号の訴えを提起すべき者の選任
 二 建物の価格の2分の1以下に相当する部分が滅失した場合の滅失した棟の共用部分の復旧
 三 建物の建替えに係る合意形成に必要となる事項の調査の実施及びその経費に充当する場合の各棟修繕積立金の取崩し
3 前条第五号の建替え決議及び第六号の団地内の他の建物の建替えと一括して建替え承認決議に付する旨の決議は、第1項にかかわらず、その棟の区分所有者総数の5分の4以上及び議決権総数の5分の4以上で行う。
4 前3項の場合において、書面又は代理人によって議決権を行使する者は、出席区分所有者とみなす。
5 前条第一号において、規約の制定、変更又は廃止がその棟の一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。この場合において、その区分所有者は正当な理由がなければこれを拒否してはならない。
6 区分所有法第58条第1項、第59条第1項又は第60条第1項の訴えの提起の決議を行うには、あらかじめ当該区分所有者又は占有者に対し、弁明する機会を与えなければならない。
7 棟総会においては、第69条第1項によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議することができる。

筆者紹介 PROFILE

平松英樹(ひらまつ・ひでき)

弁護士、マンション管理士。1968年(昭和43年)生まれ、1991年(平成3年)年早稲田大学政治経済学部卒業。不動産管理会社勤務を経て弁護士登録(東京弁護士会)。EMG総合法律事務所(東京都中央区京橋1丁目14番5号土屋ビル4階)、首都圏マンション管理士会などに所属。マンション管理、不動産取引・賃貸借(借地借家)問題を中心とした不動産法務を専門とし、マンション管理、不動産販売・賃貸管理、建築請負会社等の顧問先に対するリーガルサービスに定評がある。実務担当者を対象とする講演、執筆等の実績多数。著書に『わかりやすいマンション管理組合・管理会社のためのマンション標準管理規約改正の概要とポイント』(住宅新報社)ほか。