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弁護士平松英樹のマンション管理論

<連載第23回>

団地の建替え決議について(総論)(2/2)

2013/8/6

前ページからの続き)

区分所有法70条について

1 条文

(団地内の建物の一括建替え決議)
第七十条 団地内建物の全部が専有部分のある建物であり、かつ、当該団地内建物の敷地(団地内建物が所在する土地及び第五条第一項の規定により団地内建物の敷地とされた土地をいい、これに関する権利を含む。以下この項及び次項において同じ。)が当該団地内建物の区分所有者の共有に属する場合において、当該団地内建物について第六十八条第一項(第一号を除く。)の規定により第六十六条において準用する第三十条第一項の規約が定められているときは、第六十二条第一項の規定にかかわらず、当該団地内建物の敷地の共有者である当該団地内建物の区分所有者で構成される第六十五条に規定する団体又は団地管理組合法人の集会において、当該団地内建物の区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、当該団地内建物につき一括して、その全部を取り壊し、かつ、当該団地内建物の敷地(これに関する権利を除く。以下この項において同じ。)若しくはその一部の土地又は当該団地内建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地(第三項第一号においてこれらの土地を「再建団地内敷地」という。)に新たに建物を建築する旨の決議(以下この条において「一括建替え決議」という。)をすることができる。ただし、当該集会において、当該各団地内建物ごとに、それぞれその区分所有者の三分の二以上の者であって第三十八条に規定する議決権の合計の三分の二以上の議決権を有するものがその一括建替え決議に賛成した場合でなければならない。
2 前条第二項の規定は、前項本文の各区分所有者の議決権について準用する。この場合において、前条第二項中「当該特定建物の所在する土地(これに関する権利を含む。)」とあるのは、「当該団地内建物の敷地」と読み替えるものとする。
3 団地内建物の一括建替え決議においては、次の事項を定めなければならない。
 一 再建団地内敷地の一体的な利用についての計画の概要
 二 新たに建築する建物(以下この項において「再建団地内建物」という。)の設計の概要
 三 団地内建物の全部の取壊し及び再建団地内建物の建築に要する費用の概算額
 四 前号に規定する費用の分担に関する事項
 五 再建団地内建物の区分所有権の帰属に関する事項
4 第六十二条第三項から第八項まで、第六十三条及び第六十四条の規定は、団地内建物の一括建替え決議について準用する。この場合において、第六十二条第三項中「前項第三号及び第四号」とあるのは「第七十条第三項第四号及び第五号」と、同条第四項中「第一項に規定する」とあるのは「第七十条第一項に規定する」と、「第三十五条第一項」とあるのは「第六十六条において準用する第三十五条第一項」と、「規約」とあるのは「第六十六条において準用する第三十条第一項の規約」と、同条第五項中「第三十五条第一項」とあるのは「第六十六条において準用する第三十五条第一項」と、同条第七項中「第三十五条第一項から第四項まで及び第三十六条」とあるのは「第六十六条において準用する第三十五条第一項から第四項まで及び第三十六条」と、「第三十五条第一項ただし書」とあるのは「第六十六条において準用する第三十五条第一項ただし書」と、同条第八項中「前条第六項」とあるのは「第六十一条第六項」と読み替えるものとする。

2 総論

区分所有法70条は、下記(1)の前提要件のもとで、下記(2)の一括建替え決議を認める規定です。

(1)前提要件
 @団地内建物の全部が専有部分のある建物であること
 A当該団地内建物の敷地(団地内建物が所在する土地及び第5条第1項の規定により団地内建物の敷地とされた土地をいい、これに関する権利を含む。)が当該団地内建物の区分所有者の共有に属していること
 B当該団地内建物について第68条第1項(第1号を除く。)の規定により第66条において準用する第30条第1項の規約が定められていること

(2)一括建替え決議
当該団地内建物の敷地の共有者である当該団地内建物の区分所有者で構成される第65条[注1]に規定する団体又は団地管理組合法人の集会において、当該団地内建物の区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数による決議。ただし、当該集会において、当該各団地内建物ごとに、それぞれその区分所有者の3分の2以上の者であって第38条に規定する議決権の合計の3分の2以上の議決権を有するものがその一括建替え決議に賛成した場合に限る。

3 注意事項

上記の「一括建替え決議」は「区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数」が必要です。この「議決権」については、区分所有法70条2項が69条2項を準用していますので、必ず土地の持分の割合によることになります。規約の別段の定め(区分所有法38条)など無関係です(マンション標準管理規約(団地型)第49条7項本文[注3]参照)。

なお、前述の「建替え承認決議」は、区分所有者数は考慮されませんが、本条の「一括建替え決議」については区分所有者数も考慮されます。

ところで、この「一括建替え決議」については、当該集会において、各団地内建物ごとの区分所有者及び議決権の各3分の2以上の多数の賛成が必要ですが、ここでいう「議決権」については、区分所有法38条[注5]によることになります。すなわち、規約に別段の定めがあればそれによるのです(マンション標準管理規約(団地型)第49条7項ただし書[注3]参照)。

さいごに

国土交通省が公表している『マンション標準管理規約(団地型)』が対象としているのは、「一般分譲の住居専用のマンションが数棟所在する団地型マンションで、団地内の土地及び集会所等の附属施設がその数棟の区分所有者(団地建物所有者)全員の共有となっているもの」であり、もともと区分所有法69条及び70条が適用される前提条件を満たしているといえます。

しかし、本来区分所有法65条に基づく団地には様々なタイプのものがあります。つまり、もともと区分所有法69条及び70条が適用されない団地もありますので注意が必要です。

(弁護士/平松英樹)



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注釈 NOTE

注1: 区分所有法65条
(団地建物所有者の団体)
第六十五条 一団地内に数棟の建物があって、その団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)がそれらの建物の所有者(専有部分のある建物にあって、区分所有者)の共有に属する場合には、それらの所有者(以下「団地建物所有者」という。)は、全員で、その団地内の土地、附属施設及び専有部分のある建物の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。

注2: 民法251条
(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。

注3: マンション標準管理規約(団地型)第49条(別紙参照)

注釈別紙はここをクリック!

注4: 区分所有法62条(別紙参照)

注釈別紙はここをクリック!

注5: 区分所有法38条
(議決権)
第三十八条 各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、第十四条に定める割合による。

注6: マンション標準管理規約(団地型)第73条
(棟総会の会議及び議事)
第73条 棟総会の議事は、その棟の区分所有者総数の4分の3以上及び第71条第1項に定める議決権総数の4分の3以上で決する。
2 次の各号に掲げる事項に関する棟総会の議事は、前項にかかわらず、議決権総数の半数以上を有する区分所有者が出席する会議において、出席区分所有者の議決権の過半数で決する。
 一 区分所有法第57条第2項の訴えの提起及び前条第二号の訴えを提起すべき者の選任
 二 建物の価格の2分の1以下に相当する部分が滅失した場合の滅失した棟の共用部分の復旧
 三 建物の建替えに係る合意形成に必要となる事項の調査の実施及びその経費に充当する場合の各棟修繕積立金の取崩し
3 前条第五号の建替え決議及び第六号の団地内の他の建物の建替えと一括して建替え承認決議に付する旨の決議は、第1項にかかわらず、その棟の区分所有者総数の5分の4以上及び議決権総数の5分の4以上で行う。
4 前3項の場合において、書面又は代理人によって議決権を行使する者は、出席区分所有者とみなす。
5 前条第一号において、規約の制定、変更又は廃止がその棟の一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。この場合において、その区分所有者は正当な理由がなければこれを拒否してはならない。
6 区分所有法第58条第1項、第59条第1項又は第60条第1項の訴えの提起の決議を行うには、あらかじめ当該区分所有者又は占有者に対し、弁明する機会を与えなければならない。
7 棟総会においては、第69条第1項によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議することができる。

筆者紹介 PROFILE

平松英樹(ひらまつ・ひでき)

弁護士、マンション管理士。1968年(昭和43年)生まれ、1991年(平成3年)年早稲田大学政治経済学部卒業。不動産管理会社勤務を経て弁護士登録(東京弁護士会)。EMG総合法律事務所(東京都中央区京橋1丁目14番5号土屋ビル4階)、首都圏マンション管理士会などに所属。マンション管理、不動産取引・賃貸借(借地借家)問題を中心とした不動産法務を専門とし、マンション管理、不動産販売・賃貸管理、建築請負会社等の顧問先に対するリーガルサービスに定評がある。実務担当者を対象とする講演、執筆等の実績多数。著書に『わかりやすいマンション管理組合・管理会社のためのマンション標準管理規約改正の概要とポイント』(住宅新報社)ほか。