日本マンション管理士会連合会
磯野・前副会長インタビュー(1/2)
2013/3/26
マンション管理士制度の発足と同時に、将来を見据えた管理士の育成と社会的認知度の向上への取り組みを開始し、一般社団法人千葉県マンション管理士会会長を昨年5月に、一般社団法人日本マンション管理士会連合会(日管連)副会長をこの2月に退いた、磯野重三郎氏。住宅を「商品」としたことがそもそもの間違いとしながらも、いまある問題を解決するのがマンション管理士の仕事と、一層の“修行”の必要性を説く磯野・前副会長に、マンションの過去・現在・未来について伺いました。
仕事を請けるのはマンション管理士「個人」
――磯野さんは、2000年(平成12)年にマンション管理適正化法が制定され、翌年施行されたあと、2002年には地元で千葉県マンション管理士会の立ち上げに参加し、その後もマンション管理士会の全国組織設立などに尽力されてきました。この10年を振り返ってどのような感想をおもちですか。
よくここまできたな、というのが実感です。適正化法によりマンション管理士という資格ができても、初めの3年ぐらいは、まだどのような仕事をするのかよく分かっていなかった。各管理士会の設立目的も、初めはバラバラだったのが、ここ2〜3年でまとまってきた。
今は、思ったよりちゃんとできてるというところではないですか。また、マンション管理士の全国組織として、日管連は必要な組織です。現在の連合会もなるべくしてなったといえる。方向としては、いいんじゃないですか。
現在、マンション管理士には、管理士個人で業としている人、会の活動を中心にしている人、将来を見据えて自己研鑽をしている人など、いろいろな人がいます。いずれ収まる所に収まるでしょうが、時間のかかる課題だと思います。
日管連としても、組織体制を検討中ですが、何らかの方向性が出るものと期待しています。日管連の副会長は、健康上の理由があって、この2月で辞任しましたが、もう少し理事には留まるつもりです。
――マンション管理士または管理士会に対するニーズの変化または傾向などはありますか。
管理組合は、困っていることを相談すれば、それを解決してくれると期待する。これは、今も昔も同じです。管理士会には、相談窓口としての存在意義があります。一方で、インターネットなどが普及したため、最近は有料でもマンション管理士個人に、管理組合の支援を直接依頼することも増えている。いずれにしても、管理士の認知度自体は高くなってきていますが、その利用価値・手法は、まだ十分には世の中に理解されてないというところではないでしょうか。
最後に問われるのは人間性
大事なことは、会が業務を受託をすることではなく、管理組合への支援に対して責任をもつことです。マンションの関連分野は幅が広いので、ひとりで全てに対応することは非常に難しい。だから、会が必要になるし、会として管理組合の問題解決への要望に応えられる充分な体制を整えることが必要なのだと思います。
1都3県でマンション化率が20%を超え、住形態の重要な位置を占めている現在、行政がマンションの専門家であるマンション管理士と連携していくことも必要で、これも会としての重要な業務です。
しかし、管理組合からの受託はあくまでも管理士個人です。最近の相談内容は多種多様で、簡単には解決できない案件が多くなっています。ますます管理士としての研鑽を積むことが大切と思えます。
マンションというのは、民主主義の最小単位です。これをトラブルなく、きれいに治めるのは、技術じゃない。人間性です。管理士も、最後に問われるのは人間性や信用力だということを忘れてはならない。
最近気になるのは、相談があったときに、法や規約といった枠をはずれないことを重視するあまり、網をかぶせたような管理組合の運営を勧めていないかということです。生活に、そんなに枠が必要かということを、もういちど考えてみる必要があるのではないか。
――ユーザーというか、マンション居住者側の変化というのはありますか。
管理組合をみていると、昔と変わっていないように思います。あまり利口になっていないというか、相変わらずわがままというか。ただし、これは多分に、売る側に責任があるように思えます。
ここからは管理士としてよりは“建築屋”としての見方になりますが、住宅の目的が「巣を造る」ということから、高度経済成長の手段としての「商品」になったことが間違いの始まりだったのではないか。
(次ページへ続く)