NPO法人マンションサポートネット
田村理事長インタビュー(1/2)
2014/3/18
10年間務めたNPOの代表理事を辞任し、2013年に新しいNPO「マンションサポートネット」を立ち上げた田村哲夫氏。マンション管理は、専門家のみがおこなう仕事ではなく、しっかりした知識や情報を得て当事者である人と人との関係を構築し、複数の人たちが相談して進めていくもの。決して、上から目線による上下関係で進めるものではないと説きます。これまでにマンション管理の実状を数多く見てきた経験に基づく、「管理組合目線」のサポートについて伺いました。
管理組合の目線にたったNPOをめざす
――昨年(2013年)京都市に本部を置くNPO法人「マンションサポートネット」を設立されましたね。
なぜ新しいNPOを作ったかというと、国や地方の行政と連携した活動や管理組合の相談・交流に対応する活動と、管理組合に適切な運営のためのプロセスと客観的で分かりやすい選択肢を提供する活動を大切にしたいと考えたからです。
現在、マンション管理士や一級建築士を中心とする21名が正会員として参加しています。「管理組合の目線にたったNPO」をめざすという、同じ志をもつ仲間たちです。
本部は京都市に置きましたが、京都府内のほか大阪・兵庫・滋賀・奈良など広範囲にわたり行政主催の相談窓口やセミナーの企画・講師を担当し、マンション管理組合の大規模修繕工事・長期修繕計画見直し・理事会サポート等のコンサル業務を行っています。
――管理組合の目線にたつとは、管理組合の立場でということですか。
「管理組合目線」は、私たちのNPOが大切にしたいと考えているキーワードです。
まず、NPOの活動では、透明性・公平性・民主主義が大切です。管理組合の側に立つという私たちのポリシーにご賛同いただいた個人や団体には、サポート会員になっていただくことをお願いしています。ただし、材料メーカーや工事施工会社、管理会社などの企業は参加できません。いわゆる賛助会員という制度は設けていません。
管理組合をサポートするコンサルタントは、そもそもメーカーや施工会社の営業活動に巻き込まれやすいという構造的な問題があります。監理者としての仕事を施工会社に一任して監理報告書にハンコを押すだけ、というコンサルも、残念ながらいっぱいいるのが現実です。こうしたコンサルは安く仕事を請けることが可能になるのです。
しかし、こうしたコンサル業務のやり方では、施工会社のミスなどをきちんと指摘できません。その結果、マンションの大規模修繕工事などで、管理組合目線にたった業務が困難になる。つまり、コンサルを選ぶ際の判断基準は、金額だけではないということです。最近ようやく、これに気づいていただく管理組合が増えてきました。
マンションの管理組合をひたすらサポート
――新NPOの主要な業務は、大規模修繕コンサルですか。
いえいえ、管理組合をサポートするためには、大規模修繕のほかにも実にたくさんの活動があります。
たとえば、理事会の日常的な運営サポート。管理会社が入っているか、自主管理かによってパターンは変わりますが、マンションの管理を客観的にみることが重要です。タケカン(管)の管理の仕事に対応したサラカン(監)の監理の目が必要ということです。
あるいは、管理委託契約の見直し。管理業務の仕様書は誰が作ったものでしょうか。管理会社がもってきたものを、そのまま使っていてよいのでしょうか。私たちのNPOでは、現状の分析と改革案の提示を提案しています。
「住まいのしおり」という、住民ルール簡易版を皆さんと一緒に作成することも提案しています。なかには、「これは自治会の仕事じゃないか」という方もいますが、管理組合は単に所有者団体としては終われないのです。とくに新入居者には、20ページぐらいで十分ですから、こうしたルール集を渡しておくといいですね。
サポート(support)という言葉は、もともとは下から持ち上げるという意味だそうです。私たちは、上から押し付けるのではなく、管理組合を下から持ち上げ、ひたすらサポートすることが基本理念です。
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