日本建築家協会
宮城メンテナンス部会長インタビュー(2/2)
2014/7/22
(前ページからの続き)
JASO方式による総合耐震診断
――メンテナンス部会がマンションの修繕に関するノウハウの共有を図ったように、JASOでは耐震改修設計に関するノウハウを結集しようとしているのですか。
いえ、JASOができるのは、建物の耐震相談と耐震診断までです。
JASOでは、東京都との協定や都下各区市からの委託等に基づき、建築、構造、設備の各専門家がチームを組んで一体となり総合的な診断を行う、いわゆる「JASO方式」を確立して依頼者の大きな信頼を得てきました。
この結果、耐震診断に基づく耐震改修工事の設計についても、継続して同一のチームによる、同様な方式の総合的判断による業務の実施を求められることが多いのですが、特定非営利活動法人としての性格から、JASOが建築設計業務を通常の業務として取り扱うことには異論があります。
また、万が一設計ミスが発生した場合の補償をどうするのかという問題もあり、JASOとしては耐震改修設計業務の全面展開に踏み出せないでいました。
これまで耐震改修計画の作成と耐震改修設計、耐震改修工事の実施(工事監理)については、JASOではなくJASOの会員事務所が契約主体となることで業務の継続性を維持してきました。
しかし、管理組合として耐震改修工事を実施する場合、設計事務所単体ではなくJASOのような団体と契約することを望む声が結構多いのです。
耐震改修のノウハウを新・事業協同組合に結集
そこで、JASOの有志により、耐震改修の設計から工事監理までの業務を継続的に実施することが可能な設計主体の確立をめざし、2013年10月に建築再生総合設計協同組合(URD)が設立されました。
国土交通省認可の事業協同組合としたのは、団体として一級建築士事務所登録ができ、信頼性の高い契約主体ともなれるからです。組合員は、一級建築士事務所登録している事務所でJASOの構成員であること、また耐震補強の設計・監理の経験を有することが条件となります。
耐震改修設計に関する事例の研究・解析と情報交換を継続的に行うとともに、技術の研修・向上に努め、確実かつ良質な設計業務の実施を確保するという役割は、今後JASOからURDに移行することになるでしょう。
今後大幅に増大すると予想される既存建築物の改修・再生に関する設計業務の需要に対しても、URDは社会的な要請にこたえる技術者集団として適切な対応を行っていくことが期待されています。
管理組合が主体となった専門化活用の相乗効果
――耐震改修に限らず、マンションの修繕工事等をうまく進めるための秘訣はありますか。
建築士業務を受託するかたちで、または顧問建築士としてこれまでさまざまな管理組合とお付き合いし、大規模修繕工事や設備改修、耐震改修などを手がけてきましたが、どこにもすばらしい人格者がいるものです。
言葉を替えれば、よくできた方々がよくできたコミュニティを作っている。そして、ひとりではなく、複数のキーマンが協力して、理事会や専門委員会を組織として運営していることには感銘をうけます。
また、こうした管理組合の方々は、私たちがお話しする技術やノウハウを聞いて、こんどは自分たちの言葉で説明する努力をしています。建築士におまかせで説明もすべて建築士が行っている、住民説明会などは建築士の独壇場という場合もあるようですが、これでは専門家を交えた相乗効果が出ません。
専門家の活用というのは、管理組合が受け皿となり、主体的に考えて組織的な運営を進めることで、はじめてうまくいくのではないでしょうか。先駆的なことに取り組むとか、新しい提案を実現するような場合は、とくにそうです。
一人ひとりの区分所有者が主役となり、すべての組合員をまとめあげていくというのはたいへん難しいことです。情報の交流やそのための媒体も必要となります。
しかし、いまもお付き合いが続いている管理組合の方々が、こうした努力を実践している姿はすばらしいと思いますし、とても参考になりますね。
(2014年5月1日、取材・構成/編集部)