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維持管理MAINTENANCE

管理協が大規模修繕工事の消費税率軽減などを提言

2015/8/18

一般社団法人マンション管理業協会は「平成28年度税制改正に関する要望」をまとめ、国土交通大臣宛てに提出したと発表しました。要望したのは、大規模修繕工事にかかる消費税の軽減税率の適用と、マンションの固定資産税・都市計画税の軽減措置の2点。政府が戸建て住宅とは異なる社会資本としてのマンションの特質に着目し、提言の前向きな検討につながることが期待されます。

マンションの固定資産税・都市計画税の軽減措置も要望

管理協の発表資料によると、2014(平成26 )年末時点で全国の分譲マンションストックは約613万戸で、1500万人を超える国民が居住する重要な居住形態となっています。一方、大規模修繕工事が必要とされる築12年以上のマンションは約427万戸で、このうち築30年以上経過するものが約151万戸を占め、10 年後には約296万戸にまで増えると見込まれています。

こうした高経年のマンションでは、建物・設備の老朽化による修繕工事の増加や区分所有者の高齢化に伴う費用負担の問題等が深刻化していることから、今後、管理不全やいわゆる“スラム化”に陥るマンションが増加することが懸念されています。

社会資本として良質なマンション・ストックの維持・増加を図るためには、適正な大規模修繕工事が適切な時期に行われる環境整備が必要です。しかし、戸建て住宅の修繕が所有者個人の意思で行われることに対し、マンションでは管理組合の総会決議に基づき実施されることが一般的で、区分所有者等の合意形成が必ずしも円滑に行われるとは限りません。

また、ほとんどのマンション管理組合が徴収している修繕積立金は、おおむね12年の周期で実施される大規模修繕の時期にそのマンションを所有しているかどうかに関わらず、管理規約に基づき各区分所有者に毎月の負担義務を課しているもので、協同組合的な性格をもつ制度といえます。こうした積み立ての経緯や適時・適切な計画修繕の必要性を考慮すると、工事発注の時期が消費税率引き上げ後となったため工事費用の総額が吊り上がり、工事実施が困難となることは望ましい姿とはいえません。

こうした背景に基づき、管理協ではマンションの大規模修繕工事にかかる消費税について、管理組合が発注する工事については軽減税率を適用するかこれに相応する措置を講じることを要望書にまとめました。

さらに、マンションと戸建て住宅の受益と負担を一定の条件下で比較した場合、30年間でマンションの負担/受益率は戸建ての2倍になるという研究結果があります。

マンションは、道路や上下水道、ガス管、電気設備等のインフラ整備に関する行政コストの軽減に資する一面が考慮されず、共用部分の面積に応じた固定資産税が一律に課せられています。固定資産評価基準の経年減価の期間(マンションは60年、木造家屋は25年程度)や、土地と家屋の評価方法と課税標準の考え方についても、マンションの固定資産税は割高となっているとの指摘があります。

このため管理協は、マンション居住者が負担する固定資産税・都市計画税について、税負担の公平性の見地から軽減措置を講じることも要望点として挙げました。

要望書は、2015年7月28日、管理協の関・副理事長(業務・税制委員長)から国土交通省住宅局の香山・市街地建築課長に提出されました。国交省による今後の対応が注目されます。

関連記事:
社会インフラとしてのマンションの役割を考える(2014/12/29)

(編集部)




バナースペース

図版 CHART

図: 大規模修繕工事の市場規模
 大規模修繕工事市場規模は、現時点でも6000億円を超え、今後増加する。消費税の引上げにより、適時適切な大規模修繕工事ができなくなることも懸念される
 (出典: マンション管理業協会「平成28 年度税制改正に関する要望(補足資料)」)

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文書: 「平成28 年度税制改正に関する要望(要望書面)」(出典: マンション管理業協会のホームページ

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