管理組合総会の基礎知識(前編)
2012/10/16
管理組合の運営にあたり重要な総会の基礎知識について2回に分けて説明します。今回は「基礎知識」としていますので、少し難しい(面倒くさい)法律等の説明が入りますが、耳栓を外してお読みください。
知り合いの理事長から「区分所有者の4分の1程度しか出席しない総会を招集する必要があるのか?」、「委任状しか出さない区分所有者の1票より、出席者の意見を重視・尊重することは出来ないのか?」などの質問を受けることがあります。
理事長の気持ちは良く分かりますが、管理組合の運営は、ルールに基づき行わなければなりません。そして、その拠り所となるのが「建物の区分所有等に関する法律」(以下「区分所有法」)と各マンションの「管理規約」となります。なお、文中の「管理規約」は、「マンション標準管理規約」(以下「標準管理規約」)に準じた説明とします。
説明に入る前に、「総会は、管理規約によって管理組合の最高意思決定機関とされ、区分所有法に定める『集会』と位置付けられていること」。また、管理組合と区分所有者の関係について、「管理組合とは、区分所有法第3条(区分所有者の団体)に基づく団体となり、区分所有者になれば必ずその団体の構成員となること」が前提としてあることをご理解ください。
総会の準備から開催まで
区分所有法第43条(事務の報告)には、「管理者は、集会において、毎年一回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければならない。」 の定めがあり、この条文には以下の意味があります。
@毎年一回一定の時期について
必ずしも時期は規定していませんが、標準管理規約では第42条第3項に毎年一回新会計年度開始後2ヶ月以内に招集することを義務付けています。
A事務に関する報告について
報告は区分所有者(組合員)全員にしますが、その形式は決まっていません。しかし、報告する事務の内容には、その年度の収支決算及び事業報告や収支予算及び事業計画なども含まれますので、相応のものが必要になります。[注1]
1.開催日の決定
総会は毎年1回、多くの区分所有者(組合員)が集まることができる日程や時間を理事会にて検討したうえで、新会計年度開始後2ヶ月以内に開催します。
2.開催場所の決定
マンション内に集会室等のスペースがない場合は、外部(出来れば公的施設など)に開催場所を確保します。外部開催の場合、施設の予約開始日等を考え1〜2ヶ月前には手当てを行います。
3.開催通知の作成・配付
@議案の作成
収支決算及び事業報告や収支予算及び事業計画等のほか、建物環境や区分所有者などの意向の把握に努めたうえで必要となる議案を理事会が作成します。
A議案説明書の作成
議案説明書を読むことにより総会前に議案内容を理解してもらうことのほか、欠席の場合でも議決権行使の判断ができる内容とします。
B開催通知の配付
議案および議案説明書と共に、「出席票」「議決権行使書」「委任状」「質問用紙」等を区分所有者(組合員)全員に配付します。
その際、「出席票」には、「なお、本票提出後、都合により当日欠席せざるを得ない場合は、○○氏を代理人と定め議決権を行使することを委任します。上記に代理人を定めない場合は、理事長に委任します。」等の文言を記載し、出席票を委任状に振り替えることができるようにしておくことが大切です。
「質問用紙」は、議案についての質問を事前に受け付けることによって、議案上程者である理事会としての回答を用意しておくことが可能となります。稀に、総会当日の質問に対し、理事によって回答が異なることがありますが、好ましいことではありません。
また、欠席者のために、議案説明書を読んだうえで賛否を表明できる「議決権行使書」の活用も有効なものとなります。[注2]
4.総会当日の進行シナリオ作成
標準管理規約第42条第5項では、「総会の議長は、理事長が務める」としていますが、輪番制を用いる管理組合では、初めて議長を務める場合も多くありますので、事前に進行役、議案説明担当者等の役割を決めたうえで、その発言内容や事前質問に対する回答などを記したシナリオを作成しておきます。
総会進行シナリオの一例を[図]に掲げましたので参考としてください。
(マンョン管理士/森田和彦)
(後編へ続く)