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運営管理MANAGEMENT

管理組合総会の基礎知識(後編)

2012/11/20

前編からの続き)

管理組合総会の基礎知識の後編に入る前に、議案の決議要件について触れておきます。

総会における各議案については、議案ごとの決議要件を明確にしなくてはなりません。

決議事項には、普通決議事項と「組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上で決する。」とした特別決議事項とがあり、それぞれの事項については、標準管理規約第47条、第48条[注1]に定められています。

決議要件を明確にする際に議論となる事項として、管理規約の別表に記載のある「管理費等」の変更があります。別表の変更は、管理規約の制定・変更等として扱い特別決議事項とするか、または普通決議事項とするか・・・

これには、「管理費等の額や規約の制定・変更等については総会の決議を経なければならない(標準管理規約第48条三、四号)と規約に定められ、なおかつ、規約の制定・変更等に関する総会の議事は、組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上で決する(同第47条3項一号)と定められている場合、管理費等の額の変更については、特別決議事項の対象とはされていないと解する。」との判決が神戸地方裁判所(事件番号:平成14年(レ)第90号)において下されているため、別表の「管理費等」変更は特別決議事項ではなく普通決議事項として扱います。

総会の開催から議事録作成まで

5.総会前の準備

出席票等の提出予定日までに出席票・委任状・議決権行使書の提出状況の一覧表を作成し、未提出者に対して提出依頼等を行います。また、臨時理事会を開催して質問事項に対する理事会としての回答も用意します。

6.総会受付

管理業務を委託している場合は、管理会社担当者(管理員等)と理事が担当します。

総会の出席資格については、標準管理規約第45条[注2]に定められています。

ただし、マンション・コミュニティーを考えると、議決権や発言権は無いものとしたうえで、規約にて「区分所有者の配偶者または同居する親族は、総会に出席することができる。」などと出席資格を限定した上、多くの居住者に参加を促すことも検討に値します。

7.議案の審議

総会における議長の議決権行使について、「総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決し、可否同数の場合には、議長の決するところによる。」と規約に定めている場合は、議長の議決権行使のタイミングや「議長委任」に対する取扱いの解釈について、意見の集約を図ることが難しくなるため、標準管理規約第47条2項に定める「総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する」と規約改正し、議長も議案決議時に議決権を行使するとします。

議案については、作成したシナリオに沿って審議を進めますが、その際、議案審議が紛糾した場合の議事進行理由とすることができますので、議案審議に入る前に総会の終了予定時間を必ず報告することが大切となります。

議案の審議について定められた順序はありませんが、一般的な審議の流れとしては概ね、事業報告、会計報告、監査報告、管理委託契約締結、事業計画、予算案、役員選任等の順となります。

事業報告:事業計画に基づく報告とともに、未実施事業がある場合は、その理由も報告しなくてはなりません。

会計報告:必要な資料(収支計算書・貸借対照表等)を添付した上で、実績や前年度予算との対比を報告します。

監査報告:会計のみの監査をする場合がありますが、必ず業務の執行状況も監査し報告します。

議案事項:議案は賛成・反対の判断ができる内容のものとすることが大切であり、賛否の問えない(参加者への相談の投げかけ等)議案は上程するべきではありません。

また、区分所有法第37条1項に「集会においては、第35条の規定によりあらかじめ通知した事項についてのみ決議することができる」としていますので、議案の中に「その他」の事項を入れてはいけません。

8.議事録の作成、保管等

議事録は議長が作成し、議事録には、議長および議長の指名する2名の総会に出席した組合員が署名押印しなければなりません。

議事録には、組合員総数、議決権総数、出席組合員数・出席議決権数(委任状等の書面、代理人による出席を含む)等とともに、開会宣言から採決方法、議案審議の内容など閉会宣言までの経過の要領およびその結果を記載します。議決結果の記載について、普通決議事項の場合には賛成多数とする記載でも問題はありませんが、特別決議事項については、賛成した組合員数および議決権数を記載します。

議事録の作成期限についての規定はありませんが、議事録は、保管して利害関係人の閲覧に供さなくてはならないとされているため、1ヶ月以内を目途として、できるだけ速やかに作成します。

(マンョン管理士/森田和彦)




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注釈 NOTE

注1: 標準管理規約第47条及び第48条は次のとおり。
(総会の会議及び議事)
第47条 総会の会議は、前条第1項に定める議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならない。
2 総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する。
3 次の各号に掲げる事項に関する総会の議事は、前項にかかわらず、組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上で決する。
 一 規約の制定、変更又は廃止
 二 敷地及び共用部分等の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)
 三 区分所有法第58条第1項、第59条第1項又は第60条第1項の訴えの提起
 四 建物の価格の2分の1を超える部分が滅失した場合の滅失した共用部分の復旧
 五 その他総会において本項の方法により決議することとした事項
4 建替え決議は、第2項にかかわらず、組合員総数の5分の4以上及び議決権総数の5分の4以上で行う。
(以下の項 省略)

(議決事項)
第48条 次の各号に掲げる事項については、総会の決議を経なければならない。
 一 収支決算及び事業報告
 二 収支予算及び事業計画
 三 管理費等及び使用料の額並びに賦課徴収方法
 四 規約及び使用細則等の制定、変更又は廃止
 五 長期修繕計画の作成又は変更
 六 第28条第1項に定める特別の管理の実施並びにそれに充てるための資金の借入れ及び修繕積立金の取崩し
 七 第28条第2項に定める建物の建替えに係る計画又は設計等の経費のための修繕積立金の取崩し
 八 修繕積立金の保管及び運用方法
 九 第21条第2項に定める管理の実施
 十 区分所有法第57条第2項及び前条第3項第三号の訴えの提起並びにこれらの訴えを提起すべき者の選任
 十一 建物の一部が滅失した場合の滅失した共用部分の復旧
 十二 区分所有法第62条第1項の場合の建替え
 十三 役員の選任及び解任並びに役員活動費の額及び支払方法
 十四 組合管理部分に関する管理委託契約の締結
 十五 その他管理組合の業務に関する重要事項

注2: 標準管理規約第45条は次のとおり。
(出席資格)
第45条 組合員のほか、理事会が必要と認めた者は、総会に出席することができる。
2 区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者は、会議の目的につき利害関係を有する場合には、総会に出席して意見を述べることができる。この場合において、総会に出席して意見を述べようとする者は、あらかじめ理事長にその旨を通知しなければならない。

筆者紹介 PROFILE

森田和彦(もりた・かずひこ)

マンション管理士、防災士、福祉住環境コーディネーター。2003年(平成15年)森田マンション管理士事務所を設立。東京・足立区の住宅政策審議会委員等を歴任。足立区マンション管理士会所属。マンションの防災対策や住環境の老朽化、居住者の高齢化対策を踏まえ、複数の管理組合において管理組合の運営補助を行っている。著書に「すぐに役立つマンション管理ガイド 入門編」(共著、日経BP社)「すぐに役立つマンション管理ガイド 運営から修繕、建替えまで」(共著、日経BP社)「マンション情報BOX」(旧住宅金融公庫)ほか。