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生活管理RESIDENCE

高層マンションの火災時に非常用エレベーターを活用

2013/10/8

東京消防庁は、高層マンションやビルにおける火災発生を想定した新しい指導基準「高層建築物等における歩行困難者等に係る避難安全対策」を策定し、「一時避難エリア」の設置と「避難誘導用エレベーター」の設置を推進すると発表しました。新基準では、一定の要件を満たした非常用エレベーターを歩行困難な高齢者等の避難に活用するなど、全国ではじめての取り組みが示され、2013年10月1日から高層建築物の建築計画時等の関係者に対する指導が行われています。

避難誘導用エレベーターの認定マークを新設

東京都では65歳以上の高齢者人口の上昇が続き、2015年には都民の約4人に1人が、2035年には約3人に1人が高齢者という、極めて高齢化の進んだ社会の到来が見込まれています。

一方、高層建築物で火災が発生した場合、エレベーターは誤作動や緊急停止への懸念、エレベータシャフトが煙の伝搬経路となる危険性などから使用が禁止されているため、これまでは階段による避難が指導されてきました。

しかし、近年はタワー型マンションなどこれまでにない形態の共同住宅が増加し、居住者の大半が高齢者となることも想定されます。このため、東京消防庁は2011年4月、火災予防審議会に対して「高齢社会の到来を踏まえた高層建築物等における防火安全対策のあり方」を諮問していました。

今回の新基準は、2013年4月に第20期火災予防審議会から答申があったことを踏まえて策定されたもので、おもな避難安全対策として次の3点を掲げました。

(1) 一時避難エリアの設置(水平方向の避難対策)
 垂直避難が困難な歩行困難者等のため、消防隊が避難誘導を完了するまでの間、留まることのできる、安全性が担保された「一時避難エリア」を設置する。

(2) 避難誘導用エレベーターの設置(垂直方向の避難対策)
 一時避難エリアに留まる歩行困難者等を避難階まで避難誘導するための方法の一つとして、一定の要件を満たす非常用エレベーターを、消防隊到着までの間、自衛消防隊が救出に活用する。

(3) 避難誘導対策
 自衛消防隊により歩行困難者等を早期に一時避難エリアに誘導し、全体の避難流動性を高める。

非常用エレベーターは、火災時に消防隊が消火作業および救出作業に使用するもので、建築基準法により高さ31メートルを超える建築物に設置することが義務づけられています。ただし、多くの場合、平常時は乗用または人荷用エレベーターとして活用されています。

非常用エレベーターを避難誘導としても活用したい建物の関係者は、消防署長に届け出を行い、検査を受け、事前の訓練をするなど一定の要件を満たしたうえで、「避難誘導用エレベーター標識」(マーク)と補足表示板を設置しなければなりません。

非常用エレベーターを活用した避難誘導は、歩行困難者のための例外的な取り組みであり、火災時のエレベーター使用を禁止する原則が変わったわけではありません。また、「都内のすべての建物で、非常用エレベーターを活用した避難誘導ができるわけではない」と、東京消防庁では誤解のないよう注意を促しています。

しかし、運動機能の低下した高齢者等にとっても利用しやすい施設環境は、すべてのひとが安心・安全・快適に暮らせるユニバーサルデザインの整備につながります。ひとにやさしいまちづくりの一環として、歩行困難者等を対象とした環境整備の進展が期待されます。

(編集部)




バナースペース

図版 CHART

文書1: 新指導基準「高層建築物等における歩行困難者等に係る避難安全対策」の概要(出典: 2013年9月30日付け東京消防庁報道発表資料)。写真は、新設された「避難誘導用エレベーター標識」(マーク)

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文書2: 「歩行困難者の避難誘導のイメージ」(出典: 2013年9月30日付け東京消防庁報道発表資料)

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