マンションの防災体制強化を管理会社が支援(1/3)
2012/12/4
東日本大震災が残した大きな教訓のひとつは、マンション住民は公設の避難場所に受け入れてもらえない可能性があり、マンション自体を避難場所と想定した独自の自助・共助体制の必要性が高くなったということです。マンション単位での防災体制の整備が社会的に求められるようになったともいえるでしょう。
管理組合や自治会等の活動により良好なコミュニティが形成されているマンションは「災害に強い」といわれます。しかし、居住者による最低限のコミュニティ形成や災害への備えを、自然発生的な自助努力に期待するだけでは不十分です。
マンションの防災体制を強化するためには、具体的にはどうしたらいいのか。大手管理会社が取り組みを進める管理組合支援サービスのなかに、その答えとヒントを探りました。
地震対策マニュアルで「対災力」をアップ
株式会社東急コミュニティーは、同社が管理受託する全てのマンション約4500組合を対象とし、PDCAサイクルを取り入れた震災対応支援活動を推進しています。具体的には、同社が整備した「地震対策マニュアル」のひな形と、大地震の発生を前提とした「防災訓練ガイド」を利用し、各管理組合が独自の震災対応の検討を進めることを提案。さらに、実際に準備、訓練、検証を繰り返す防災活動を継続的に実施することで、災害に対応できる「対災力」を備えるための支援を行っています。
「地震対策マニュアル」のひな形はA4判34ページで、防災用品・備蓄リストや避難経路、地域の避難場所など、各マンション独自の情報を盛り込んで完成させるための標準版として使用。管理組合で内容を検討し、完成版を作成したうえで各世帯に配付し、災害時に自主的に対応できる共助活動の備えとします。
「防災訓練ガイド」はA4判57ページで、震災発生を想定した防災訓練を実施するための手引書として利用。一般・大規模・高層・複合用途などマンションのタイプ別留意点や、多くの居住者に参加してもらうための参考事例など、管理組合役員が訓練を実施する際に役立つ情報が盛り込まれています。最新版は2012年5月に改訂したもので、東日本大震災の反省点などが反映されています。
「マンションの防災対策は、居住者が自主的に行うことが重要。また、大震災が発生した場合、管理会社が全てのマンションの救援を即時に行うことは、実際には不可能です。この意味で、自主防災の支援を積極的に行うことが管理会社としての社会的使命です」と、東急コミュニティーの経営企画部広報センターでは管理組合支援の狙いを説明します。「『対災力』を備える提案は長年にわたり取り組みを続けてきましたが、PDCAサイクルによる実践的な提案は、実際に東日本大震災を経験し、それぞれのマンションに合わせたオーダーメイドのマニュアルを作り込むことが重要と考えた結果です」。
PDCAサイクルで“生きたマニュアル”を作成
管理組合への具体的な提案内容は、次のようなPDCAサイクルに基づいた継続的活動が基本となります。
【Plan】マンション別「地震対策マニュアル」の作成
【Do】「自主防災組織」の整備構築
【Check】防災訓練の実施・支援
【Action】マニュアル・自主防災組織・防災用品の備蓄の検証
※以上のPDCAサイクルを継続的に支援
「マニュアルに沿って防災訓練を実際にやってみると、項目追加や備品購入など、いろいろと反省点が出てくるものです。検証した結果をマニュアルに反映させ、それを次の訓練に生かして、というようにPDCAサイクルを回していくことが大切です。どんなに立派なマニュアルやガイドも、作って配っただけでは意味がありません」(広報センター)。また、防災訓練のやり方も、マンションの実情に合わせて考えるべきものといいます。「例えば、マンションとして自治会の防災組織に参加しているような場合です。大事なのは、いざという時に実際に機能するように準備をすることだと思います」。
東急コミュニティーでは、2012年3月から震災対応支援活動を全社規模で続けてきました。2012年10月末には、3000を超える管理組合がすでに同社の提案を検討中とのこと。最終的に採用されるかどうかは各マンションの判断になりますが、2013年3月をメドに全ての管理受託マンションに提案するとしています。
(マンション管理士/波形昭彦)
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