マンションの防災体制強化を管理会社が支援(3/3)
2012/12/18
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かつては「夏祭り」のような地域の恒例行事が世代を超えた交流の場となり、マンション単位で同様の催事を行うことも少なくありませんでした。
しかし、小規模なマンションでは独自の行事開催に限界があり、大規模なマンションや町内会等でも役員の負担が大きいことから、大がかりな行事の開催は近年敬遠されがちです。
一方、現代のマンション居住者の意識やライフスタイルに合った住民参加型イベントの開催を、管理会社の立場から支援する取り組みが、住民同士の連携や交流に成果を挙げています。
「マンション打ち水大作戦」への参加を呼びかけ
長谷工管理会社グループ3社(株式会社長谷工コミュニティ・株式会社長谷工スマイルコミュニティ・株式会社長谷工コミュニティ九州)では、毎年、管理を受託しているマンションを対象に「マンション打ち水大作戦」への参加を呼びかけています。
居住者と管理会社が共同で企画・実施する打ち水イベントは、環境意識の向上につながることに加え、居住者が一体となって取り組むことでコミュニティ形成にも寄与することから、新しいタイプの恒例行事として定着するマンションが増えています。
イベントの実施推奨期間は、7月の大暑から8月の処暑までの約1か月間で、2012年は7月23日(月)から8月23日(木)まで。長谷工グループが管理受託するマンション(約2900組合・28万戸)に対して事前告知を行い、参加を表明したマンション管理組合の居住者が、期間中にマンション敷地内で風呂の残り湯など身の回りの水を二次利用して、地球にやさしい打ち水イベントを実施しました。
管理会社からは、参加者ノベルティとしてオリジナルのしずく型うちわやお菓子(特製「ベビースターラーメン」)などを提供。あわせて、「打ち水写真コンテスト」やうちわの裏面を用いた「メッセージイラストコンテスト」を実施して優秀な作品を後日表彰するなど、打ち水を1日限りのイベントで終わらせないための“しかけ”も用意されています。
また、子どもに人気の“戦隊もの”キャラクター「打ち水マン」を考案し、コスチュームを各支店に配備しました。「若手社員がコスチュームを着て参加することが多いのですが、管理組合の役員の方が『打ち水マン』になることもあります。伸びる素材なのでサイズはある程度調整が効きますが、中は結構暑いんですよね」と、長谷工コミュニティの営業開発第1部営業課の課長、原氏は笑って経験談を話します。
「管理会社はあくまで盛り上げ役の裏方なのですが、打ち水のおかげて楽しめましたといってあとで写真を送ってくださる方もいます。打ち水だけでなく、すいか割りをやったり、冷やしトマトを参加者に配ったり、また夏祭りの一環として打ち水を取り入れたりと、マンションによってはいろいろな工夫もあります」と話すのは、営業開発2部営業2課主事の柴田尚徳氏。「打ち水は、管理組合様での準備が特に必要なく、道具などはほとんど長谷工コミュニティが用意するので、役員様としても開催しやすい点がいい。参加者がお互い顔見知りとなることで、防災・防犯上や合意形成がしやすくなるなどのメリットもあり、コミュニティの形成が間違いなくマンションの良好な維持管理につながっています」。
「マンション打ち水大作戦」は、長谷工管理会社グループが業界初の試みとして2008年に実施して関係者の注目を集めました。初回は221組合・2万3262世帯が参加し、その後参加者数は年々増加。2012年には、過去最大の約1000組合・5万世帯以上の居住者が参加するイベントに成長しています。
マンションの特性に応じた防災体制強化の提案
長谷工グループでは、管理組合による防災マニュアルの作成や防災訓練の実施、緊急連絡網の整備など、マンションの防災体制強化へ向けた提案にも取り組んできました。小規模マンションでは非常用トイレキット、避難完了プレート、家庭用防災用品などの備品の整備、大規模マンションでは非常用飲料水生成システム「WELL-UP(ウェルアップ)」、マンホールトイレ、かまどスツールの「防災3点セット」の導入を提案するなど、各マンションの特性に応じた具体的な提案を積極的に行っています。
なかでもWELL-UPは大規模災害時に威力を発揮し、四川大地震(2008年)とスマトラ沖地震(2012年)では長谷工グループによる救援物資として寄贈。東日本大震災でも、千葉・浦安市の被災マンションに緊急配備して給水活動に貢献しました。インフラ寸断時の飲料水確保に対する関心が高まっていることもあり、震災後は備品としての導入提案が増えているといいます。
また、居住者向けにも、季刊広報誌などを通じて防災に関する情報を分かりやすく提供し、無理のない範囲で防災意識の向上を図っています。2012年4月には、あらかじめ家族で決めておくべきことや備えておくべきことなどを確認するためのチェック方式の冊子「地震に備える」を作成して配布。好評なため、7月には、実際に地震が起きた場合にとるべき行動をまとめた冊子第2弾「地震が起きたら」を作成しました。
長谷工グループでは、今後もマンション居住者間のコミュニティ形成を促進するイベント支援を続けるとともに、管理会社の立場から積み重ねてきた日頃の備えを活用し、各種提案を積極的に進めていく計画です。
(マンション管理士/波形昭彦)